toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

「危険な美学」を次期・安倍政権へ託した小泉首相の無責任と日本の危機

・・・[副題]「カネの流れに身を任せた日米同盟」と「北のミサイル戦略」の実像


  下記は[2005-12-19付toxandoriaの日記、『小泉劇場』が培養する悪徳の栄え/耐震構造偽造問題の深層](http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051219)で「日米政権の特殊なもたれあい関係」について述べた部分の抜粋です。このくだりを改めて読んでみると、今回の「小泉=ブッシュ・日米首脳会談」における小泉首相の異常な“乱痴気ハシャギ”ぶりをもたらした「米国側からの厚遇接待」の意味が理解できます。ブッシュ大統領自らがエアフォースワンを駆って小泉首相プレスリーの故地グレースランドまで案内したことの意味がそこから見えてくるのです。この「特別待遇」は、小泉首相ブッシュ政権の巨額のイラク戦争経費(約35兆円相当の部分)を負担して2004年のブッシュ再選の支えとなったたことへの御礼であり、更に約3兆円超の米軍基地整備関連費用の負担を約束してくれたことへの御礼という訳です。


『・・・ところで、我われ一般国民は、日本政府が去る2003年1月〜2004年3月までの15ヶ月間に総額35兆2564億円に及ぶ「円高」阻止名目での史上空前の為替介入(円売ドル買)を行ったことを忘れるべきでありません。政府は、このために必要な円資金をFB(財務省短期証券/13週で償還する超短期国債)を発行し、それを銀行等の市中金融機関へ売却して調達しました。無論、FBの発行は国会の承認を得ることになっていますが、為替タイミングの困難性等の理由から、日銀が市中金融機関へ必要額の立替を指示し、後日に国会承認を取り清算するという便法が編み出されました。が、これが仇となり、更にスピードを求める財務省から日銀へ立替を迫るという形へエスカレートして介入資金が無制限になる道が出来上がってしまったのです。このプロセスで、市中金融機関がFBを購入する資金の裏づけとなるのは、我われ一般国民の預金です。


日本政府は、この為替介入で入手したドル資金をそのままの形で保有せず「米国財務省証券」(米国債)へ換えています。それは、年4%以上の利子が付く米国債(ドル建)へ投資すると手持ちのドルが自然に増えるという理屈からです。しかし、実際にはこれがNY連銀の金庫に保管されるルールとなっているため為替市場ではドルの量が一向に増えないのです。この結果、アメリカが使えるドルの量は日本政府の為替介入後でも総量が変わらないのでドル高(円安)を意図した為替介入(円売ドル買)の効果は一時的、瞬間風速的な意味しか持ち得ないことになります。ここから明らかになるのは、結局、日本政府の為替介入(円売ドル買)の意図はアメリカの財政赤字の補填にあるのだということです。更に驚くべきことは、この2003年1月〜2004年3月で日本政府が為替介入した総額35兆2564億円は米ドル換算(時価概算)で約3200億ドルにもなり、これは同年度(期間)にアメリカが使った「イラク戦争の経費」(約3300億円)に匹敵するのです。従って、我われ一般国民は、殆んど自覚せぬままにアメリカのイラク戦争に身銭を切って加担していることになります。


また、日本政府はこの米国財務省証券の預かり証と引き換えに市中金融機関(銀行)から円を受け取り、それを為替市場でドルと交換します。この時、我われ日本国民の銀行預金は主に米国などの外国投資機関の手に渡ることになります。この辺りのプロセスは、見方によっては何となくオレオレ詐欺の手法に似ているように思われてきます。これは杞憂でしょうか? ともかくも、このようにして日本政府がFBを担保に増刷した円資金が外国投資機関の手に渡り、最終的にはその一部が外資から日本の株式市場へ向かう大量の投資資金として還流してくるのです。従って、今や日本の株式市場は外資系の投機筋の手に操られることになっています。これが、現在、日本の株式相場を上昇させているブースターの大きな部分を占めていると考えられ、更に、その誘い水に魅かれた日本の個人投資家やネット株投資家が株式市場へ大挙して靡き、積極的に参入した構図が生まれているような気がします。


考えてみれば、これはある意味で日本政府の巧妙な金融政策であり、強かな景気刺激策であると言えないこともありません。しかし、更によく考えて見れば、これは甚だしく日本の国益を損なっており、しかも日本国民を騙して大きな犠牲と不要不急のリスクを強いていることでもあります。その一方で、日本はアメリカ経済の尻拭いのために貢ぐ形になっている訳です。今や、このようにして日本・中国などの海外資金がアメリカの赤字国債の約54%を賄う形にまでなっています。そして、「2005.12.8、朝日新聞・夕刊「経済気象台」」によると、これらの国々の金利が上昇するとアメリカへの資金流入が減少してブッシュ政権がますます苦境に嵌るので、特に日本は今のまま『心地よい円安』を続けるべきだというのが日本政府の考え方なのだそうです。何故、多くのマスメディアは、このように驚くべき背任的な政策への疑問を日本政府へぶつけることをしないのでしょうか? 『心地よい円安』とは見事なキャッチ・コピーだと思いますが、相変わらずのオジャラケ政府ぶりで、トコトン我われ一般国民も舐められたものだと思います。ともかくも、このようにして“おセレブな小泉チルドレン”の喝采を浴びながら『小泉詐欺劇場』の公演はロングラン・ヒットを続けています。・・・』


  今回起きた北朝鮮のミサイル発射は、時間の経過とともに様々な波紋を広げつつあります。そこで目立つのは、米国サイドのジャーナリズムが比較的冷静な報道姿勢であることに比べ日本側の報道が、テレビの緊急アンケート調査の発表方法などの中にややエキセントリックな姿勢が見えることです。例えば、7月5日のニューヨーク・タイムズの社説は“今回の北朝鮮のミサイル発射実験は国際条約に違反しているわけでもないので、アメリカやその他の国が北朝鮮を軍事攻撃する正当性ができたと考えることはできない”と論じています(http://blog.mag2.com/m/log/0000023713/)。同じような見方は、在米の作家・冷泉彰彦氏も「from911/USAレポート、第258回」の中で述べています。別に言えば、これはアメリカのみならず世界の中で、北朝鮮包囲網の前面で日本が“やや前のめりになっている”という空気が存在することを意味します。そして、ここで最も重要なのは、日本は、日本と同様に北朝鮮のミサイルの射程圏内にある中国・韓国及びロシアと良好な関係を維持すべきだということです。一方、日本では、このような世界の空気を敢えて無視するかのように拉致事件への大きな憤りもあって、北朝鮮に対する敵対心と警戒心が高まりつつあるため国内政治的にも“ますます前のめりになる空気”が創られようとしています。


  このような時にこそ、我われ一般国民は、ワーッと全国民が総がかりで“先ず軍備増強路線へ突っ走ること”に十分過ぎるほどの警戒心を持つべきです。また、アメリカのみならず、世界中の多くの国のかなりの割合の人々が、日本周辺の東アジアについての正確な地政学的知識を持ってはいないという現実を理解すべきです。つまり、このような時こそ、良きにつけ悪しきにつけ、お互いについてかなり正確な知識を共有できる(可能性も含めて)のは中国・韓国などの地政学的に身近な近隣諸国であるということを冷静かつマキャべリスティックに理解すべきなのです。歴史観に欠けた戦争劇画・戦争マンガのファン、あるいは2チャンネル上のネット・マッチョマンのような単細胞の輩の暴走が懸念されます。更に注意すべきは、政権与党など政治・行政の中枢に根強く巣食っている、アナクロで「危険な戦争美学」の信奉者たちの蠢きです。


  このような観点から見ると、ブッシュ政権の巨額のイラク戦争経費(約35兆円相当の部分)を負担し、約3兆円を超える米軍基地整備関連費用の負担を約束して「日米軍事同盟」へ過剰なほどの肩入れをする一方で、「靖国神社参拝」へ拘るあまり国家的危機管理の観点からして最重視すべき中国・韓国との政治的断絶を放置してきた「小泉政権の責任」は重大です。また、その正統な後継者を自認する(実像はともかく、恐れ多くも過半の善男善女から信用されている!)安倍官房長官ら現時点における日本政治の「大本営幕僚」らの責任は重大です。憲法改正と軍備増強を急ぐばかりが、あるいは自衛隊体験ツアー(参照/「パセリちゃんツアー」、http://www.jda.go.jp/j/events/paseri/index.html、「大学生のための自衛隊 隊内生活体験ツアー 」、http://www.koyasan-u.ac.jp/~fjosh/events/events_data/2005/050822sdf.htm、「はとばすミリタリーツアー」、http://d.hatena.ne.jp/byh04556/20060620/p1)などを奨励して軍国主義への雰囲気づくりに精を出すことばかりが「北朝鮮対策」ではないはずです。


  たまたま、作家・梯久美子氏の小説『散るぞ悲しき、硫黄島総指揮官・栗林忠道』(新潮社)が第37回大宅総一ノンフィクション賞に決まり話題となっています。日本本土の一部である硫黄島を「大本営」の“命令に従って最後まで玉砕せず”に守りぬき死んでいった総指揮官・栗林中将とその部下たちの真の人間像(真に勇気がある日本国民の姿)を発掘した秀作です。梯久美子氏は膨大な資料にあたり、栗林中将とその2万人の将兵たちに与えられた“酷(むご)い役割”を抉り出します。責任感が強かった栗林中将は、2万人の部下たちに“万歳突撃”(玉砕)を禁じて最も苦しい生き方に耐えることを命じたのです。その間、彼らは終戦の交渉が捗ることを期待していたのであり、彼らが苦しい生を生き続ける意味はそこにしかなかったのです。最後の突撃が迫ったとき、栗林中将は全精神力をふりしぼって「大本営」あてに辞世の句を送りました。


『国のため 重きつとめを果たし得で 矢弾尽きはて 散るぞ悲しき』


  しかし、この辞世の句は「大本営」(無責任で臆病で愚かな大本営は誤った作戦命令と虚偽発表を繰り返してきた)によって『散るぞ口惜し』と改竄されていたのです。このことを発見した梯久美子氏は、この小説を書く決心をしたそうです。梯久美子氏は次のように語っています。・・・栗林中将の辞世の句の改竄のように、国の指導者が美しい言葉や勇ましいコトバを使う時が危ない。「大本営」が発表する「危険な美学」に酔ってミスリードされぬように十分に警戒する必要がある。・・・北朝鮮がミサイル外交を始めた今は、確かに日本の危機です。しかし、この危機は敢て招きよせられた可能性は無きにしも非ずなのです。この点は視野を広げて刮目し続ける必要があります。そして、ジャーナリズムも一般国民も、この混沌の中にどのような真実が隠されているのかを絶えず勇気をもって見抜く努力を続けるべきです。また、少なくとも、現代では日本も含めて世界中の市民層の過半以上の人々が“平和主義者であること”に自信を持つべきです。そして、最も臆病にもかかわらず権力の座についてしまった人々こそが戦争を始めてしまうという歴史的現実があることも記憶に止めるべきです。


・・・以下は「付録」です・・・


これは、亡き歌姫テレサ・テンのヒット曲『時の流れに身を任せ』のパロディ版・歌詞、『お金の流れに身をまかせ』です。これを日本の歴史に名を残す名宰相・小泉純一郎氏へ贈呈します。まさに“市場原理主義と戦争原理主義の結婚”がもたらしたワグナー作のオペラ、「狂乱のワルキューレ(Walkure、戦死者を選ぶ者の意)の騎行」に似つかわしい唱です。カラオケがお好きな方は、どうぞ存分にお楽しみ下さい。


・・・前略・・・


もしもブッシュに嫌われたなら


明日という日なくしてしまうわ〜♪


約束なんかいらないけれど


想い出だけじゃ生きてゆけない


カネ(日本国民から奪い取ったMoney!)の流れに身をまかせ〜♪♪


ブッシュの胸に寄り添い〜♪♪


プレスリーに逢えたそれだけで


テポドンさえも怖くないわ〜♪ 


・・・後略・・・