toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

高すぎる日本の「民主主義のコスト」


  1996年、当時の橋本政権は、2001年を高コスト是正の期限と設定して、日本経済の活力回復策を盛り込んだ抜本的な政策の名称を「経済構造改革」と名づけました。橋本首相は調整役の当時の通産省に改革案の作成を指示し、通産相の諮問機関である産業構造審議会の基本問題小委員会の中間報告をもとに具体的な方策を関係各省庁と折衝し調整を急ぎました。そして、改革政策の最終案が1996年12月11日に発表されました。この計画案では、日本の物流・エネルギー・通信・金融・流通などの産業基盤コストが他国と比べ高いことから、それが企業の生産コストに跳ね返り、結果的に日本の国際競争力が無くなりつつあるという立場に立って具体策を提示しています。現在、小泉構造改革で進められている「カイカク」路線は、当然ながら、この時の基本構想に沿ったものです。


  「小泉構造カイカク」の実態が当初の掛け声とは乖離しており、その実態の殆どが「骨抜き」の結末になるという、善良な庶民を誑かす「絵解き紙芝居状態」(or猿芝居状態?)になっていることは周知のとおりです。何事につけ計画を実行する段階で最も重視しなければならないのは、具体策についての「優先順位」ということです。この観点からすると、特に日本経済の活力回復のために必要なことは人材の活用ということであり、官民を問わぬ人材の流動化と、それらの人材を有効活用するための労働法制、労働環境、労働関連規制などについての再点検・充実を実行することです。また、これと連動させる位置づけの下に公務員制度改革、政治・行財政改革を早急に断行することが焦眉の課題であったはずです。


  しかし、この最優先課題の周辺では、政治資金制度にかかわる、謎に包まれた不明朗な迂回献金問題や高級官僚の天下り、それに伴う汚職・政官癒着など果てしない「闇の部分」が次々と現れますが、なぜか放置されたままです。この点になると与野党ともにフリーズ(固まった)状態です。ここに至っても政治家・官僚の自己規制が一向に見えてこないことが、何にも増して日本の将来にドス黒い不安の影を宿しています。“李下の冠”どころか小泉首相を筆頭に政治家や官僚たちには“開き直り”の態度すら垣間見えています。大きなプロジェクトは政府主導で実施され、そのため国家に多くの金が集中し、利権が発生する。優秀な官僚がその利権を動かす力として自分の権限を交差させ、また、その利権を求めるため多くの大手企業が汚職・賄賂といった泥沼に優秀な官僚たちを誘い込み、官僚たちはその罠にはまり込んで行く。


  つまり、日本では優秀な人材ほど汚職や賄賂に汚染されやすいという社会・政治・経済環境が構造的に確立しているのです。このような流れは、小泉カイカクの下でも放置されたままであり、一般国民はいつまで経っても真っ先に貧乏クジを引かされる役柄に甘んじなければなりません。これでは、ますます日本国民が、恰も吸血鬼に生き血を吸われ続けるような苦しい立場を強いられることになり、「カイカク」は政治家、官僚、大企業のためだけに終わるということになりそうです。そして、一般国民に苦しみだけを与える、吸血鬼ドラキュラ化した日本政府は、いったい何処へ向かおうとしているのでしょうか?


  2004.12.26付・朝日新聞「社説/政治資金、この報告では分からぬ」の中に、次のような政治資金に関する分析が書いてあります。・・・(部分抜粋・転記)・・・政治と金の問題には、今年もうんざりさせられた。旧橋本派の1億円献金隠しがあり、いったん自民党本部を経由させる「迂回献金」の存在も明らかになった。どう見ても、政治資金はきちんと公表されていない。そのさなかに、昨年分の政治資金収支報告書が出揃った。・・・しかし、それを読んでも、資金の流れはなかなかつかめない。・・・法律どおりに作成された報告にも見えない部分が多すぎるのだ。・・・自民党は、昨年、154億円の税金を政党交付金として受け取った。党収入の6割だ。民主党にいたっては収入の8割強を交付金に頼る。巨額の税金を飲み込みながら、公表はおざなり。馬鹿にするのもいい加減にしろといいたい。・・・政治資金規正法の改正問題は、先の臨時国会でも動かなかった。来年の通常国会でも実のある進展はおぼつかない。ならば、ここは国会に第三者機関を設け、知恵と権威を借りたらどうか。いま必要なのは、与野党がにらみあうだけの現状を突き動かすことだ。・・・


  第三者機関を設けるのもいいですが、ただ、そのような機関を設けるだけでは、委員の手当金や日当が嵩むだけのことになりかねません。従来の“御用審議会”の延長では、例えば学識経験者やマスコミ代表(経営者、解説員クラスの幹部記者)の審議委員などが政官癒着にお墨付きを与える役割を担う場面すら見られており、ただ経費の無駄遣い額を大きくするだけになる恐れさえあります。最大の問題は、我われ一般の国民が、このような国民の存在をコケにする政治家や官僚の不届きな仕事の「不公正」(反民主主義的な行為や既得権益)に対して本気で怒らないことです。日本人の“人の良さ、呑気さ”という美徳が、その大きな原因かもしれませんが、政治家や官僚たちの無駄な経費の実態の分かり難さが、より大きな原因だと思われます。問題解決のポイントは、ただ、この1点を自分に関係がある危機的な問題として理解し、本気で腹を立てることにあると思われます。


  そこで、この問題をわかりやすく単純化するために、「日本の民主主義」(本当の民主主義が実現しているとは思えないので、仮に“擬似・民主主義”と呼ぶ方が適切か?)のコスト(費用)という観点から特に目立つ数字を拾ってみることにします。また、それに対して、これから「小泉内閣」が日本国民に課そうとしている増税プランを並べてみます。この二つのデータを比べて見ても腹が立たないとするなら、それは余程のお人よしか、むしろ現行システムの恩恵を受ける立場にあるかのどちらかだということになると思います。(なお、ここでの数字は、あくまでも概数であり、下記の各URL等を参照して採録・推計したものである)


[擬似・民主主義のコスト]


(1)国の一般歳出の中の公債費を除いた義務的経費に占める人件費の割合


29.4%(10兆円/34兆円、国家公務員数100万人、1人当の人件費1千万円)


<注>義務的経費:一般歳出における人件費・扶助費・公債費のこと/一般民間サラリーマン平均年収:600〜650万円程度/地方公務員の人件費:約30兆円(300万人)


・・・この官民格差を基準として計算すると、公務員(国家+地方)1人当たりの過剰人件費の総額は少なくとも12〜14兆円程度に達すると推計できる。


(2)国会議員の年収/歳費支出額


歳費支出額=2,400万円


・・・この他に文書交通費、特殊乗車券交付、別途旅費交通費、立法調査費などが支給されており、平均 すると国会議員1人当たりの年収は約4,400万円。(総理大臣は、これに1、400万円程度加算。また、この他の経費を加算すると議員一人あたりの歳出総額は約1億円に達する)


・・・これを元に衆参両議員に対する歳費の年間支出額を計算すると約465億円。しかも、これには選挙に関する多額の費用、大臣・議長等の役職手当、運転手付公用車費用などは一切ふくまれていない。 

・・・更に、この金額に政党助成金と公設秘書に支払われる経費を加算すると、国会議員の手に渡る費用は約800億円(政府税収の約0.2%相当)の多額になる。


・・・なお、日本(人口約1.2億人)の衆議院議員480人に対してアメリカ(人口約2.8億人)の下院議員435人を比べると、日本の国会議員の数が如何に過剰であるかがわかる。


・・・この他に下記のような特権(特典)が与えられる。


議員宿舎


高輪・九段等の一等地にある議員宿舎(3LDK)の家賃が10万円程度。永田町までの無料送迎バス付き。


<交通費>


地元へ帰る新幹線はグリーン車の利用が無制限。同じく飛行機は月当り4往復分が支給。


<議員年金>


勤続10年で年額412万円。10年以上は段階的に上昇する。


(3)特殊法人独立行政法人化による、新たな無駄づかいの発生


・・・2004.7.3付・朝日新聞・記事の分析によると、「特殊法人独立行政法人化」によって、官僚の天下りポストが3倍に増え、そのラスパイレス指数(年齢構成を加味した国家公務員給与水準との比較)が1.2〜1.3倍となっている。結果的に、この「カイカク」がもたらしたのは国家公務員より2〜3割給与水準が高い「準国家公務員」へ衣替え(カイカクの名の下での看板の書き換え=改悪)ということであった。なぜ、これが「カイカク」と言えるのか?


・・・準公務員の数は諸説があり判然としないが、国と地方を合わせると約400万人というのが定説。この数字を(1)に加算すると、驚くなかれ給与水準の官民格差の総額は、少なくとも倍増して約24〜28兆円の巨額に達する。


(4)その他(高額が目立つ公務員給与の事例)


公正取引委員会・委員長:年収約3,100万円
金融再生委員会・委員長:年収約2,600万円
人事院総裁:年収約3,270万円
会計検査院・院長:年収約3,200万円


[小泉内閣による増税等による国民負担増のプラン]


(実施/確定A)
雇用保険料引き上げ   02年10月〜   (1,500億円)
医療保険の患者負担増  02年10月〜   (4,800億円)
介護保険料引き上げ   03年4月〜    (1,100億円)
医療保険料率引き下げ  03年4月〜    (5,200億円)
・酒税の引き上げ     03年5月〜    ( 800億円)
・タバコ税の引き上げ   03年7月〜    (2,200億円)
・厚生年金保険料の負担増 04年10月〜   (3,200億円)
配偶者特別控除の廃止  04年12月〜   (4,800億円) 
・個人住民税の引き上げ  04年〜      ( 500億円)
公的年金保険控除縮小  05年1月〜    (1,200億円)
・老年者控除の廃止    05年1月〜    (1,200億円)
国民年金保険料の値上げ 05年4月〜    ( 400億円)
雇用保険料引き上げ   05年4月〜    (1,500億円)
・住民税のアップ     05年6月〜    (1,800億円)
介護施設の居住費の徴収 05年10〜    (1,000億円)


▲1 以上が国民負担増の確定金額の概要。総計=3兆1千2百億円



(実施/予定B)


・厚生年金保険料引き上げ 05年10〜    (3,200億円)
定率減税の圧縮・廃止  06年〜      (12,500億円)
・療養病床費の自己負担  06年〜      (1,000億円)


▲2 以上が国民負担増の確定金額の概要。総計=1兆6千7百億円


▲3 現時点(2005.8.17現在)における小泉改革の成果=国民負担増額の推計(概算)
                         4兆7千9百億円


(その他/予定)


・年金課税による高齢者負担増
生活保護老齢加算廃止
・高齢者控除縮小・廃止
・住宅ローン減税の縮小
・フリーターの課税強化


  こんなデータを見て、日本の未来がバラ色に染まるとしたら、余程おめでたいということになるでしょう。それどころか、普通の感覚の持ち主なら気持ちが暗くなるばかりです。・・・が、今回の国会で一つだけ明るい(?)ニュースがありました。それは民事訴訟法の弁護士負担に関する『敗者負担制度』に関する法案が廃案になったことです。しかし、この「国民一般にとって大事なニュース」は殆ど報道されていないようです。(『敗者負担制度』については
Blog/http://takaya.blogtribe.org/entry-4c75b5d533bdabd57a282ff0dc6cd98e.html)を参照。

(参照URL)
http://shinsho.shueisha.co.jp/toranomaki/030129/
http://sp.mt.tama.hosei.ac.jp/users/igajin/home2.htm
http://www.asao.net/mailinglist/15/0613.html
http://www.soumu.go.jp/index.html
http://kodansha.cplaza.ne.jp/motoki/content030/content5.html
http://www.geocities.jp/seikatushahoni/new040703.htm
http://smallbiz.nikkeibp.co.jp/members/SERIES/20030204/102633/
http://plaza.rakuten.co.jp/paintbox/diary/200412040000/
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?