toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

「神憑る小泉劇場」と「ホリエモン」が煽ったトリクルダウン幻想


  自由主義的な考え方の根本についてアダム・スミスへ大きな影響を与えたとされるイギリスの政治思想家マンデビル(Bernard de Mandeville/1670‐1733)の著書『蜂の寓話』(The Fable of the Bees/1714)の考え方の根本は“「私的悪徳と強欲」が最終的には「公共的便益」につながるのだ”という奇妙な考え方です。それを言い換えれば、“贅沢、虚栄、虚勢、我欲、強欲、傲慢、嫉妬心などの凡ゆる悪徳こそが経済的繁栄につながると主張する特異な思想であり、マンデビルは、それらをむやみに公権力で制限することは逆に国家の衰退を招くのだ”と主張したのです。この考え方を現代的・合理知な“経済理論風にソフィスティケイトしたもの”が供給サイドの活性化を重視する「サプライサイド経済学」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%89%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6)の立場であり、それが現在の日本を風靡する“小泉=竹中流新自由主義思想”の土台となっているのです。そして、この“小泉=竹中流新自由主義思想”に引きずられる日本は、小泉首相の「靖国神社参拝」への拘りという異常なファクターが加わることで、更に、異様に「神憑る小泉劇場」と化しつつあります。


  また、この“小泉=竹中流新自由主義思想”の強固な信念となっているのが「トリクル・ダウン理論」(trickle-down theory/原義は水滴などがポタポタ滴り落ちる/参照、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E7%90%86%E8%AB%96)です。それは、政府の資金を公共事業や福祉などで低所得層や弱者層の国民に直接配分するよりも、傾斜的に大企業や富裕層の経済活動を活性化させる「勝ち組-負け組み」政策(貧富差拡大・二極化政策)の方が国の経済政策としてより有効だという考え方です。そうすれば、やがて富の一部が低所得層に向かって徐々にポタポタと流れ落ち、国民全体の利益になるという訳です。我が国では、小渕内閣所得税最高税率を引き下げた時(平成11年以後の各年分の所得税最高税率が50%から37%に引き下げられるとともに、各年度分の住民税の最高税率(700万円超の課税所得金額)が15%から13%に引き下げられた、http://www.prings.com/tax/kaisei10.htm#s1)に、この考え方が理論的根拠として用いられました。


  今や、小泉首相が「通常国会」開会の施政方針演説で“自画自賛”と“無責任極まりない「有終の美」”発言(=敵前逃亡発言?)をする一方で、国家財政破綻の不気味な足音が次第に大きくなりつつあります。この小泉首相の底抜けに『無責任な感覚』は一体何なんでしょうか? そもそも小泉政権は、名目上は橋本内閣の「財政構造改革」を引き継いだはずでしたが、2002年の国会で「こんな公約を破るなど大したことではない!”と雄叫びを上げた直後から、なぜか「財政構造改革」の目標は放置されてしまい「郵政民営化」一本の目標へ突っ走ってきたのです。その後、2004年3月の日銀発表から日本の家計貯蓄率はマイナスへ転じ始めています。このたび「金融広報中央委員会」(事務局・日銀情報サービス局)の「家計の金融資産に関する世論調査/2005年版」が発表されました(2006.1.22付・日本経済新聞http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20060122AT1F1302521012006.html)が、それによると貯蓄を「持っていない」と回答した世帯(2人以上)が22.8%を占め、その割合は昭和38年(1963)に調査を始めて以来最高となっています。また、この貯蓄を「持っていない世帯」の割合は2004年比で0.7%上昇しました。実に、日本の全世帯の約1/4近くが「無貯蓄世帯」となってしまったのです。一方で、ここで日本の富裕層は世界で2番目に多いとの指摘もありますので、「神憑る小泉劇場」の下で日本における世帯間のニ極化が着実に進んでいることが分かります。


  2005年の衆議院選挙で、日本国民は小泉自民党を圧倒的に支持しましたが、その時、小泉首相は国民に対して次のような点についての明言と議論を避けています。


郵政民営化によって国債暴落の危険性が増大するという事実
・・・それまでの発行済み国債の約1/4、140兆円を郵貯簡保保有しており、このような買い支えができなくなると国債暴落の懸念が高まる。


小泉政権下で財政赤字が更に悪化した経緯の説明
・・・それまでの在任中に約二百数拾兆円の財政赤字を増加(国債を増発)させた。


●大増税政策を予定していること(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060109
・・・選挙用のリップサービスでは増税を否定していた。(これは耐震強度擬装などの詐欺行為に等しい!)


  その一方で、小泉首相は“人の心も金で買える!”と公言するホリエモンを日本国民が見習うべき独創的なビジネスモデルの旗手として最大級の賛辞を送りながら持ち上げ、「総選挙の顔」の代表に仕立て上げて見せたのです。雑誌「livedoor 2005 winter」(参照、下記URL★)上での自民党武部幹事長による“堀江君は素晴らしい青年だ”という発言に、その深々とした余韻が残っています。このように「神憑る小泉劇場」が鼓舞してきた“格差ある社会は活力がある社会だ!”というフレーズは、まさにカルトの信条ではないかと見紛うばかりです。また、今になって見れば、2002年の国会での小泉首相の雄叫びが『「アメリカ・ブッシュ大統領」と「ヒューザーの小嶋社長」と「ホリエモン」のためを思えば、こんな公約など破っても大したことではない!』の聞き違いではなかったかと思えてきます。


★「堀江君は素晴らしい青年だ」 自民党武部幹事長 ライブドア誌対談でベタ褒め(北海道新聞・記事)
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?&d=20060121&j=0022&k=200601218883 


  今、我われ日本国民は、そもそも『トリクル・ダウンの呪文』(trickle-down theory)を唱えた人物の名がデビル・マン(=悪魔/Devil-Man)の逆綴り(Mandeville)であることを想起すべきです。我われは、気づかぬうちに呪われた政治を選択し支持していた恐れがあります。18世紀初頭のデビル・マンの呪いで、我われ日本国民は、おぞましい「サルのマスタベーション劇場」を無理やり鑑賞させられているのかも知れません(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060112)。


(参考資料)


岸田コラム/ホリエモンの特捜部捜査を動かした本当の理由
http://www.kishida.biz/column/2006/20060120.html


立花隆のメディア・ソシオポリテクス/ライブドア粉飾決算事件でITバブルははじけたのか?
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/060118_itbubble/


ホリエモン小泉純一郎 
http://blog.goo.ne.jp/yamane_osamu/e/93f24937ef9890694292567bd7144dd7


「問題あると思わず」 ライブドア宮内取締役ら供述
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2006012101004379


小泉劇場で『政府の民営化』が実現した先にあるものとは?
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050914/p1


米貯蓄率、大恐慌以来のマイナスに・2005年
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060122AT2M2100X21012006.html


米企業業績、一部に陰り・10―12月期
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060122AT2M2101821012006.htm

米国産牛肉:消費者団体連絡会、信頼回復求め首相に意見書
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20060122k0000m040069000c.html

「格差は拡大している」 公明代表が内閣府見解を批判
http://www.asahi.com/politics/update/0120/009.html

米要請でも靖国参拝やめず 大統領に首相明言
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2006012101004377