toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

「反CPEデモ」に見る、フランス民主主義の“ど根性”(続々々編)

【「フランス・デモ騒動の現況」のその後】

《補足14》「フランス・デモ騒動の現況」(2006.4.7付・日経新聞、パリ発より要約)

●UMP(与党国民民衆運動(党首、サルコジ内相)の上下両院議員団長らが6日も引き続いて労働組合と学生団体からの聞き取りを行った。一方、ドビルパン首相は6日の記者会見で辞任説を否定した。

●会見に同席したブルトン経済財務産業相は、全国ストや大規模デモが長期化すれば経済に対する影響が出る可能性があることを示唆した。また、フランス経済のイメージが外国メディアの影響で悪化することを懸念した。英エコノミストは、最新号で“未来と向き合うフランス”と題して「目隠ししたおんどり」(ドビルパン?)の風刺画を掲載した。』

《補足15》「フランス・デモ騒動の現況」(2006.3.10、記)

●自分で知り得る範囲のことですが、その後、日本のメディアから関連情報が殆んど入らなくなりました。しかし、下記の在仏ブロガーの記事(★)で関連情報が紹介されていたので、その一部分を転記しておきます。
★『うるわしのブルターニュ』、http://bretagne.air-nifty.com/anne_de_bretagne/

●これによると、シラク大統領が、4月2日付けでCPE部分を除外した「機会平等法」を公布したことが分かります。そしてCPEについてはシラク大統領の演説を踏まえて法改正まで運用を凍結する(5月上旬に修正案が議会で討議される予定)という異例の対応をとることになったのです。

・・・以下、『うるわしのブルターニュ』より転記開始・・・

いきなり登場した「機会平等法」、これだけではさっぱりわからない。私自身法律をうまく説明できない。そこで検索したら在日フランス大使館のなかに機会平等法という項目があった。これをさらに簡単にまとめてみた。フランス語の原文はAssembl馥 nationale国民議会のEgalit・des chancesに載っている。

1)フランスの若者が置かれている状況、特に雇用状況は改善されなければならない。
若者の高い失業率を下げる施策が必要。
2)機会平等法案には、数十年来続いているこの状況に対する具体的な解決策が盛り込まれている。
教育と雇用による解決、差別対策、家族および市町村における権限の回復、ボランティア市民サービスなど。
3)この法律の鍵を握る要素に、初期雇用計画(CPE)がある。
従業員20人以上、雇用対象は26歳未満CPEは無期雇用契約である。
CPE給与所得者は多くの権利を得る。
2年の試用期間中、契約の解消は簡略化されるが、労働法は守られる。
4)ヨーロッパの主要国は同等の仕組みを備えている、もしくは導入を検討している。
たとえばドイツでは年齢にかかわらず、新契約には24カ月の試用期間を設けている。
<注>おおむね、ヨーロッパ諸国では就業前の学生がアルバイトまたは無償の就業体験で即戦力のために必要な仕事を経験することが前提とされている。

マオ猫日記のフランス全土でCPE反対デモにさらに詳しい解説がある。機会平等法についてはたいていの人が反対してはいないのだが、その中に含まれるCPE(初期雇用契約)が争点となっているのである。反CPEの運動で特に問題となっていたのは「2年間の試用期間内は理由をつげずに解雇できる」ということだったがシラク大統領は、「試用期間を2年から1年に短縮すること」と「解雇の理由を本人に通知すること」を修正することを演説の中で明らかにしている。

4月4日に反CPEのデモに参加した人たちの多くは「CPEそのものを機会平等法から省くことが必要だ」と主張している。フランスの労働条件はいったいどうなのか。全国統一ストライキを決行してまで、CPEはどうしても止めさせなければならない悪法なのだろうか。フランスっての2つのエントリー新卒雇用契約(CPE)とCPE(新卒/初任雇用契約)の内容、さらに平均給与額の裏側を読めば、フランスの労働者は日本より待遇がいいことがわかるだろう。

しかしながら、これらの権利はこれまでフランスの労働者たちが戦って勝ち取ってきたものである。フランスでは日本のように企業にはいってから仕事を覚えるのではなく、先に自分が働きたい職種でstageスタージュ(ただ、もしくは低賃金)をする。なぜなら就職にあたり「経験があるのか」ということが重視されるからである。日本人なら「新卒なのに経験なんてないにきまっている」と答えるのではないか。でもそれでは採用されないのだ。そのため大学生は夏休みの間、スタージュをしてそれを自分の経歴に記入する。大学を出ても就職できない若者たちは、短期契約や臨時雇いのような職を転々としている現状もある。

CPEのような試用期間を設けることによって確かにみかけの失業率は減少するだろう。だが、26歳まである日突然理由もなく失業するというのでは人生設計などたてられない。CPEに反対する人は「なぜ26歳までと定めなければならないのか。若者を差別し使い捨てにするつもりか」と怒っているのである。さらにこれが認められれば、また別の法律が出来て既存の権利をうばわれるのではないかという不安もある。

・・・以上で転記終わり・・・

《補足16》「フランス・デモ騒動の現況」(2006.4.10付・共同通信、パリ発/同日付・asahi.comより要約)

●10日、シラク大統領はCPEを事実上撤回して新たな若者雇用策の導入を目指すことを決定した。これに基づき、同日にドビルパン首相はテレビとラジオで演説し、このほど公布された「機会平等法」からCPEを削除し別の条項に差し替える方針を発表した。

●これによって政府は労働者と若者たちの抗議行動に屈したことになり、シラク大統領とドビルパン首相の政治力は大きく傷ついた。なお、来年の大統領選挙の絡みがあるため今後の動向も見据え続けなければならない。

《補足17》「フランス・デモ騒動の現況」(2006.4.11付・日経新聞等より要約)

●与党によると、撤回したCPEの代替策は16―25歳で大学入学資格を持たない若者や失業率の高い地域の居住者らを正規に雇った企業への財政支援策となる。与党は10日中にも改正法案を議会に提出することになった。なお、この財政支援策の原資にはタバコ税の増税分が予定されている。

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フランス革命後のフランス共和制の歴史は、コミンテルンhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%B3)より遥かに古いだけでなく、その重層的な知恵の構造の中には原初的なエネルギーが今も秘められているようです。愚かなことに、コミンテルンの“技術面”の上っ面を模倣した(軍事力・暴力による民主化の実現)ブッシュ政権ネオコン政権)が、「米大統領、機密漏洩を許可」の真相が露呈したため(http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060408AT2M0702T07042006.html)、今や七転八倒の苦境に嵌っています。

●TVのワイドショー的手法でショタレB層を騙し続けることに味を占めた小泉政権は、このまま逃げ失せるのかも知れませんが“腐敗・暴走した権力のエネルギー”は、それを支え続ける官僚らの手によって間違いなく後継者へバトンタッチされるはずです。一部のテレビコメンテータらは、新生民主党(小沢-管体制)に対しても、小泉自民党のやり方を真似てメディア対策(特にTV対策)に力を入れるべきだなどと注文をつけ始めています。彼ら(権力の太鼓もちたち=セレブなデマゴーグたち)は、どこまでもショタレB層を騙し続けるつもりなので、これからも“暴走化する権力へ”の監視の眼を緩めるわけには行かないようです。

NPOの経済効果について、ほか/「『反CPEデモ』に見る、フランス民主主義の“ど根性”(続々編)」に追記した内容の再録」】

アメリカにおけるNPO活動(アソシエーション)のルーツとしては、先ず合衆国政府による社会政策から発展してきたものがあります。例えば、1960年代のラディカルな公民権運動への対応として社会福祉団体や人権団体などへの助成を充実させたことから始まるNPOが存在します。どちらかというと、この流れは人格的なコミュニケーション重視型のアソシエーション(フランス型のアソシエーション)というより上から与えられた政策遂行型のNPOです。

●もう一つは1980年代にシリコンバレー不況の中から、新たな活路を求めて芽生えた草の根的な市民活動であり、こちらはサンフランシスコ周辺の市民活動から始まっています。一方、フランスのアソシエーションは、ご周知のとおり1901年の「アソシエーション法」(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060321 )に始まる歴史の古いものですが、成立(設立)要件がアメリカより緩やかな点に特色があるようです。国や自治体と一定の距離を保ちながら自立性を確保して客観的な作業を展開していることもフランスのアソシエーションの特色です。

●また、こういう比較はあまり意味がないと思いますが、5〜6年前に調査した時の数字では、たしかアメリカのNPO活動がもたらす付加価値額が対GDP比に占める割合は10%程度であったはずです。恐らく、フランスも同程度の数字になっていると思われます(統計データが少ないため新しいデータは持っていません・・・)。おなじことについての日本の数字は、未だ2%程度に止まっているようです(下記資料★参照)。
★『経済主体としての存在感を増すNPO』、http://www.sumitomotrust.co.jp/RES/research/PDF2/640_2.pdf
<注>この対GDP比10%という数字が如何に大きなものであるかは、例えば下記の数字(★1、★2)と比較すると容易に理解できる。

★1「音楽産業」の対GDP比は約1%以内であり、この数字は世界中のどの国でも似たり寄ったりである。(出典:ネット社会の未来像(春秋社)、p264、池田信夫氏(須磨国際学園情報通信研究所)のコメント)
★2日本における「出版産業」の対GDP比は高々0.4%程度である((2兆円/500兆円)*100で概算)。

●フランスのアソシエーションで働く専従職員(有給の被雇用者)は約120万人で、全給与労働者の約6%強を占めており、雇用の観点から見ても、このセクターの拡大はますます無視できなくなっているようです。無論、フランス型のアソシエーションの意義は一般企業と同じ意味での経済活動にある訳ではなく、様々な問題を抱えた地域や分野における生活世界での人間的紐帯となる役割こそが本来のアソシエーション(フランス型のアソシエーション)に期待されているものだと思います。

●いずれにしても、官僚の天下り機関や暴力団の隠れ蓑などと見紛われることもある日本のNPO事情は異常であり未成熟だと思います。