toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

『儒教の誤解=忠君愛国』へ回帰する日本の政治家たち

●このところ、中国を始めとするアジア諸国では儒教を見直す動きが見られるようです。一様に儒教を見直す動きがあるとしても、国によってその背景は様々だと考えられます。ただ、一つ言えることは日本の政治家たちの多くが、ひたすら「忠君愛国」型国家への回帰のトラウマに取り憑かれていることは間違いがなさそうです。

靖国参拝問題、改憲教育基本法改正、、国民投票法共謀罪防衛省格上構想などに纏わりつく“独特の胡散臭さ”の淵源の一つが、この辺りにもあるようです。かつて、小泉首相は「『罪を憎んで人を憎まず』とは孔子の言葉でしょう?」と語って識者らの物笑いの種となったことがあります。が、これにも懲りずに日本の政治家たちは論語の精神の真髄である「忠君愛国」へ戻れとざわめき出しています。ところが、これも大いなる誤解であり、この言葉も儒教聖典である『論語』には一度も出てこないものなのです(詳細は、中国古典文学専門家の下記ブログ記事(★)を参照)。
★ブログ朴斎雑誌、http://puzhai.cocolog-nifty.com/zazhi/2005/06/post_f18e.html

●このような混乱を“為(タメ)にする意図を持つ”元祖・右傾倒(系統?)の人々はともかくとして、このような誤解の渦中に日本中の多くの国民(特に政府与党によってB層と見做されているショタレ・ヘタレ層)が巻き込まれ、戦前回帰の激流に飲み見込まれることが懸念されます。

●下の文章は、太平洋戦争の最中に日本全国の町内会が“大政翼賛”体制の末端組織化して行ったことの証拠となるものであり、これは筆者の祖父(恐らく不承不承ながら常会の役員を押し付けられていたと思われる)の遺品の中にあった『常会手帳』から転記したものです。「小泉首相靖国神社参拝の強行」と「共謀罪強行採決で突破しようとする執拗な動き」の背後には、この「常会手帳」の時代への「異常なノスタルジー」の情念が蠢いているように思われてなりません。

■[常会組織へ下達された『防諜心得』]の一部転載

【常会手帳】より(筆者が現代表記へ直して転載)
昭和15年11月22日、訂正発行版 発行所:皇道振興会 著作発行人:長澤小輔(東京市四谷区左門町4番地)

スパイといえば、兎角、軍事機密のみを考え易いが、戦争が国家の人的、物的のあらゆる資源を総動員する所謂「国家総力戦」の形態をとるようになると、軍事機密だけではなく、これ等の資源の状況を知ることも戦力判定の資料となるのである。ところが総動員に関する機密は頗る広範囲なものであって、国民生活と蜜不離の関係にあるものであるから、今日では防諜の完璧を期するには、是非とも国民全体がこれに協力しなければならない。これが国民防諜の必要な所以である。では、このスパイの魔手を防ぐに如何にせねばならぬかというに、第一に秘密を絶対に他人に漏らさぬことである。殊に官庁や軍需工場に勤務する者は、職務上知り得た秘密事項は家族にも話さぬ覚悟でなくてはならない。

「秘密で語った秘密は漏れる」一旦口から漏らしたことは必ずスパイの耳に入るもとの思わなくてはならない。汽車、汽船、電車、バスの中などで、秘密に亘ることを得意然と声高にしゃべっている者があるが、スパイは外国人だけと思ってはならない。殊に軍事上の秘密に関しては厳重にその漏洩を防止する必要がある。この種の事項に就ては手帳や紙片にも記入せぬだけの心がけが必要である。官庁や官吏、軍人、軍需工業関係者の家庭から紙屑を買集めるのはスパイの常套手段である。又、スパイは官衛、学校、工場、会社、商店等へ照会を発し、その回答から日本の資源の状況や交通網、鉄道車両数、自動車数、商船数等水陸の交通施設の状況を知り、或いは航空工業、自動車工業、化学工業、染料工業の資料を得るのであるが、これ等の照会は学術上又は商取引上の照会に擬装しているから、一見疑いを挟む余地がなさそうに見える。この点に深く注意して慎重に回答する必要がある。

何でもない照会だと思い込むと、その中に一つだけ機密に関する質問が隠されていることがある。文化団体、社交団体への照会、調査にも思想戦の重要資料が照会先や内容を十分に検討する必要がある。

戦地から来た手紙を会報などへ載せるとそれから重要な戦地の情報をとられることが多い。戦地へ出す手紙にも秘密事項や固有別部隊名を書かぬように注意せねばならない。

要するにスパイを防ぐには、これに対応する国内の組織を一日も早く確立せねばならない。所謂国内新体制は防諜の上からも必須の条件である。そして我われ国民の思想や考えの中にある謀略の温床体を打ち砕くこと、即ち外国思想にかぶれぬことこそ防諜の根本である。
換言すれば、真の日本の姿、日本の力、日本の美点、日本が外国に卓越している点に目ざめることが先決問題である。

=防諜標語=

◎文を書くなら軍機に触れるな、安否尋ねて無事知らせ
◎小さなことでもいうなよ秘密、言えば東亜が築かれぬ
◎見える敵なら恐れもせぬが、見えぬスパイが恐ろしい
◎武勲は顕わせ軍機は隠せ、焼けよ紙屑棄てるな書類
◎手柄話に触れるな軍機、遠くの敵より近くのスパイ
=臣道実践=
◎これからだ、出せ1億の底力
◎よし行こう、ただ臣道を驀(まっしぐ)ら

=常会手帳使用心得=

常会にて打合わせに入る前儀式を執るときに・・・

1 巻頭に皇居二重橋の御写真がありますから手帳を一斉に戴くようにして下さい。この際は手帳を開いてもその儘でも宜しいと思います。

2 神勅、勅語詔書又は綱領、宣誓等を斉唱するか或いは司会者これを区切って謹読し一斉に復唱するようにしても宜しいと思います。尚又毎回一定のものでも、其都度神勅から順次かえて行うことも一方法と思います。

3 この様な儀式は余り普通の会合や家庭に於いては行われておりませんが、常会はお互が日本臣民として行的な実践によって修練して行く大切な道場に致し度いものと思います。変だとか可笑しいと思ってはなりません。これも新体制の一つと心得べきであります。

4 常会記録は、常会で決議されたこと実行すべき事を記録して忘備する為めに書いてください。