toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

2006年、夏のフランドル(オランダ・ベルギー)旅行の印象/プロローグ


【四枚目の画像解説】聖バーフ大聖堂(Sint Baafskathedraal)


カール五世(1500〜1558)が洗礼を受けたというゲント最古の教会、聖バーフ大聖堂(Sint Baafskathedraal)の起源は13世紀まで遡り(ベルギー人の一派ワロン人の寺院として建立の記録が残る/参照、下記・参考URL)、現在の建築はゴシックの内陣とロマネスクの塔が合体したものとなっています。因みに、ゲントは『青い鳥』の作者メーテルリンクの故郷であり、16世紀初めには神聖ローマ皇帝カール5世が、この地で生誕し洗礼を受けています。彼の庇護の下に黄金時代を迎えたこの町は、ブリュージュと並ぶ北方ルネサンス発祥の地です。


また、この教会の聖堂内には15世紀フランドル絵画の最高傑作」と絶賛される、ファン・アイク兄弟(Hubert van Eyck/ca1370-1426、Jan van Eyck/ca1390-1441)の祭壇画『神秘の子羊』(http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/e/eyck_van/jan/09ghent/index.html)があります。


(参考)1254. Listed goods in the Walloon region: the gotich choir, the Romanic tower, the presbytery (2nd half of the 18th century), the terrace gardens and the surroundings.
(http://www.opt.be/informations/wallonia_attraction/EN/A/V/43683.html)


<注>


この四枚目の画像の左端にある電線はトラム(安全性と低公害の実現を期待される路面電車)用のもの。オランダ・ベルギーの各都市ではトラムが重要な市民の足となっている。


二枚目(正面)、三枚目(左横)の画像はブラッセルにある欧州(EU)委員会のビル。この周辺は「EU District」と呼ばれており、この他に欧州議会などEU関連の建物や新鉄道駅などが集中的に建設中。たまたま、この地区に隣接するホテル・ルネッサンスに宿泊した。


一枚目の画像は街全体が美術館のように美しい古都ブリュージュの早朝の佇まい。


●下記の文章(末尾の『 〜 〜 〜 』の部分)は、フランドル旅行の前にある友人へ送ったメール内容の一部です。この内容は、今回のフランドル旅行(8/12〜8/21)での直接的な体験と合致している部分もあり、合致していない部分もあります。


●合致していない部分について言えば、それは合致しないというよりも、予想以上に新鮮な驚きに近いということでした。アムステルダム、デルフト、アントワープブリュージュ、ゲント、ブラッセルなどの諸都市の美しさと、その自然環境保全の見事さ、或いはその都市の空気が清澄であること(オランダの光? or フランドルの光?)はもとより、この一種の“カルチャー・ショックのような不思議な気分”を一気に文章化することは不可能です。強いて短く言えば、これはオランダ・ベルギー両国民が“実に賢く歴史(ブルゴーニュ支配の時代、ハプスブルグ支配の時代、スペイン・フランス等列強支配〜独立・近代化の時代、そして深刻な宗教戦争の歴史など)を学んで”現実にしぶとく、かつ寛容に生きているという市民生活のリアリズムを目撃したことです。そして、この気分と直接の関係はありませんが、次のようなこと(◆)が印象に残りました。


デン・ハーグ(オランダの行政首都)で、日本で言えば霞ヶ関と皇居が合体したような地区(国王宮殿と隣接する中央官庁街)を見聞して驚いたのは、三色のオランダ国旗とともに青いEUの旗も翻るその地区一帯が実に開放的で自由な気分に満ちていたことです。誰でも立ち入りが許され、そこには厳めしい官憲の制服・軍服も官僚臭も一切ありません。そこからそれほど遠くない路上の屋台でオランダ名物の“ニシンの酢漬け”の立ち食いを経験しました。・・・が、その夜、ホテルでテレビのスイッチを回すと、「厳めしい(この時だけ?)小泉首相の8/15靖国参拝」のニュースが、レバノン情勢に次ぐほぼトップに近い扱いで流れていました。しかも、その翌日から、日本関係のニュースはピタリと止まってしまいました(例外は日経平均株価関連だけ)。


◆ところで、この官庁街の一角にあるのがマウリッツハイス美術館です。そこではオランダが誇る偉大な画家フェルメールの二つの傑作、『真珠の耳飾の少女』(http://www.mystudios.com/vermeer/21/vermeer-girl-pearl-earring.html)と『デルフトの眺望』(http://www.mystudios.com/vermeer/13/vermeer-view-of-delft.html)ほかの珠玉の芸術作品が、内外の別を問わず、また誰かれの分け隔てもなく、そこを訪れる人々をやさしく迎え入れてくれます。恐らく、このように上質な国家的ホスピタリティを内外の人々へ平等に提供する演出こそが、現代の我が日本国に決定的に欠けているものです。


◆そして、帰国直後に驚かされたのは各マスメディアが横並びで発表した小泉内閣と「小泉首相・8/15靖国参拝」の支持率調査の発表であり、しかも予想どおりとはいえ両支持率が軒並みに大きくアップしており、「小泉首相・8/15靖国参拝」については、もはや過半以上の国民が支持に回っているようです。喩えれば、これは日本国民全体が一種の重い「テレビ or ネット or ブログ中毒症」を罹患し、視野狭窄の異常心理(=歴史に無知な根無し草的右傾化)に嵌ったということだと思われます(これらの中でNHKの報道姿勢がやや大人しく感じられた)。


◆ところで、今回のフランドル旅行で体験したような“アンチ右傾化・アンチ軍国主義化・アンチ国家主義化の気分”をより深いところから文章化するためには、今後の当ブログ記事の更新ペースは落とす必要があるようです。今後もブログ記事は書き続けますが、更新ペースは高々が月に1〜2回程度として、殆んど放置状態のHP(レンブラントの眼)の方を、逐次、充実させるつもりです。ネット利用者やブロガーは、それぞれ自分の分に合わせるのが肝要であり(文章化能力があるブロガーはこの限りにあらずと思いますが・・・)、ブログの効用は記事の分量ではなく、特に凡庸なtoxandoriaの場合は、“自分なりに新しい視点を発見できる一種の喜びの場”とすべきであることを今回の旅行体験から改めて学んだようです。当然のことですが、リアリズムの世界は、ネットに限らず我われの周辺に満ちみちているのです。


・・・そして、やはりベルギービールは美味でした。


(参考資料)ベルギービール関連URL


ベルギービールの歴史:http://www.geocities.jp/beerforum/bhistory.htm
札幌でベルギービールが飲めるお店、Paul’S Cafe:http://www.mnc.to/~pauls/
仙台でベルギービールが飲めるお店、ダボスhttp://www.dabos.biz/
東京でベルギービールが飲めるお店、BLUSSELS:http://www.brussels.co.jp/
金沢でベルギービールが飲めるお店、ル・マルカッサン:http://www.k2.dion.ne.jp/~marcasin/
京都でベルギービールが飲めるお店、Le Monument bleu:http://web.mac.com/monumentbleu/iWeb/Le%20Monument%20bleu/Welcome.html
名古屋でベルギービールが飲めるお店、スピリッツ・ビアバー:http://www.spirits1888.com/
大阪でベルギービールが飲めるお店、バレル:http://www.belgianbeercafe.jp/
神戸ベルギービールが飲めるお店、La Bruxelloise:http://r.gnavi.co.jp/k863200/


・・・この他については下記を参照。
ベルギービールが飲める店:http://page.freett.com/bugyonawa/jcafe2.htm


(追記)600枚を超える写真を撮りましたが、記事に併せて(画像サイズを縮小しながら)追々とUPしてゆくつもりです。


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『 暑中お見舞い申しあげます、と言っても涼しすぎますね。
小生は相変わらずで、先週の後半から夏季休暇に入っています。
ところで、来月(上旬末〜下旬初めころ)には、久しぶりに海外(オランダ&ベルギー)へ出かけます。一人で行きますが、これらの地域には以前からとても憧れていました。今、いろいろと関連情報の収集・インプットに取り組んでいるところです。


昔から、ベネルクス三国というと一緒くたに考えがちですが、特にオランダとベルギーは個性がまったく違います。


オランダは現在のアメリカのルーツ(自由主義思想の発祥地という意味で)のような国ですが、大航海時代の約250年に及ぶ日蘭交流史の事実があり、日本は近代化の過程で計り知れぬほどの恩恵をオランダから受けています。ライデン大学には文献学(日本語の資料で日本文化を研究する立場)を伝統とする「日本学センター」があります。そして、オランダを代表する芸術家といえば、何といってもレンブラントフェルメールを忘れる訳には行きません。


ベルギーはオランダと対照的にカトリック文化の伝統が根付いていますが、欧州諸国の中で最も遅れて産業革命植民地主義の時代を経験した国(1960年にベルギー領コンゴコンゴ民主共和国として独立)です。そして、ベルギーを代表する芸術家といえばルーベンスを忘れる訳には行きません。


なお、ベルギーの歴史・文化的な価値は、オランダ市民社会の誕生〜最盛期(16〜17世紀)に先行する14〜15世紀頃にあります。いわゆるベルギー・フランドル地方には、当時繁栄したブリュージュ、ゲントなどの古都が中世そのままの姿で残されていることが最大の魅力です。なお、ごく大雑把にいうと、ベルギーの北部(フランドル地方)はオランダ文化圏、南部(ワロン地方)はフランス文化圏です。 

                                   
これら二つの国の特徴を一言で言えば、アメリカ型のグローバリズムの波に洗われながらも、ひたすら溺れるままにならず、貴重な歴史経験から得た知恵を生かして国の経営が行われていることです。無論、地政学的な利点もあるでしょうが・・・。


混迷の度合いを深めるばかりのように見える我が国も、例えば徹底したワークシェアリングなどに関して、これら両国の現在における資本主義の姿から日本の未来のあり方を考えるヒントを得ることができるのではないか、と思っています。人口減少傾向への対応方法やアジア諸国との関係のあり方なども含めて・・・。


今ではヨーロッパの小国(人口規模、オランダ:約1,500万 ベルギー:約1,000万、国土面積、オランダ:九州の約1.5倍、ベルギー:ほぼ四国程度)に過ぎない両国民の意識の底にはヨーロッパ市民(EU市民/ベルギーの首都ブルッセルはEUの中心地で“EU District”を建設中)としての意識が定着しつつある一方で、彼らはそれぞれの特異な歴史経験についても強い愛着を持ち、それを大切にしているように見えます。そして、恐らく、後者の深層にあるのは“神憑りの愛国心”のような“狂気&カルト的な感情”ではなく、生まれ故郷へのノスタルジーのような“強い愛郷心”のようなものではないかと思っています。 』