toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

2007年、ユマニスム復興への期待

【画像】


Photograph of the Sunrise.Photographer: Ian Britton、presented by free picture bigfoto com.http://www.bigfoto.com/miscellaneous/photos-01/


ミラノ、ドウオーモ(撮影 2006年8月)


(日本社会の混迷度を促す二つの背景)

(その一)

阿部謹也著『近代化と世間』(朝日新書)によると、約9世紀もの闘争の歴史を経て(およそ中世の半ば頃に個人(分割できないモノ≒a single object or thing)という言葉が出来てから)ヨーロッパの「個人」はフランス革命の頃を経て漸く実質的な権利を手に入れました。

その結果、欧米諸国は個人主義を基本とする近代化を成し遂げます。明治以降には、日本も近代化(欧米化)を口実として凡ゆる国の制度を欧米風に改革してきました。しかし、明治政府は「人間関係のあり方」(=主従関係など)の近代化まで手をつけることができませんでした。

その空白部分に巧妙に摺りこまれたのが、日本を守る国民会議の発起人として活躍し、皇国史観を提唱した歴史学者平泉澄(1895-1984)による「国体の精華のイデオロギー」(皇国日本の“美しい花”を死守するために闘うというナショナリズム意識)です。

小泉前首相の靖国神社参拝を批判したため、右翼団体幹部によって放火され、山形県鶴岡市の自宅を焼失した自民党衆議院議員加藤紘一氏によれば、小泉・安倍政権及び小林よしのり氏らの考え方は明らかにこの流れを汲んでいます(参照、加藤紘一著『テロルの真犯人』(講談社))。

(その二)

また、ヨハネス・ドウンス・スコトウス(Johanes Duns Scotus/ca.1265-1308/スコットランド出身、フランシスコ会派のスコラ神(哲)学者/パリ大学教授)は、「アウグスティヌス神学とキリスト教の融合」(=トマス・アクイナスの「自然経験主義的な傾向」と「キリスト教」の安易な融合)を徹底批判したことで名高い人物ですが、彼は人間の現実世界における「個人意志」と「自由」に基づく「行動」を重視する立場に立っています。

ただ、スコトウスの「個人意志」と「自由」が向かう方向は「善」(倫理観)であり「利己心の徹底追及」(私利私欲の徹底追及)ではありません。従って、スコトウスの立場からすれば、現代アメリカ発のワシントン・コンセンサス(新自由主義思想の実践)を前提とする「市場原理主義」は誤謬ということになります(参照、toxandoriaの日記『自由と実践理性の葛藤、その現代的意味(1/2)』http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050403、『自由と実践理性の葛藤、その現代的意味(2/2)』http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050404)。

(更なる混迷の予兆)

1月1日付・時事通信(ネットニュース、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070101-00000009-jij-soci)によると、2007年の新年を迎えられた天皇陛下宮内庁を通じて感想を公表し、「互いに信頼し合って暮らせる社会を目指し、力を合わせていくよう、心から願っています」と述べられたそうです。この天皇陛下のご発言は非常に重要だと思われます。

<注>既述の皇国史観歴史学者平泉澄イデオロギーの中には、天皇の考えが誤っている場合はそれを正統アカデミズムが諌めるべきだという考え方がある。

同日付・読売新聞(ネットニュース、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070101-00000101-yom-pol)によると、安倍首相は年頭所感で「憲法改正について国民的な議論が高まることを期待している」と訴えています。

加藤紘一著『テロルの真犯人』(講談社)は、「日本の若い世代が右へ右へと流される原因の一つは、靖国神社遊就館の展示方法(歴史認識)が“第二次世界大戦は日本による西側帝国主義からの解放だと若い世代に教えている(米・下院外交委員長ヘンリー・ハイド氏)ことによる」ことを指摘しています。
・・・なお、この部分に関しては保守派の中でも混乱(意見の分裂)が起きている。例えば、遊就館の展示方法(歴史認識)の見直しを岡崎久彦氏(元・外務省情報調査局長)が勧告したことに対し、小林よしのり氏は激しく批判している。

一方、2006年12月30日付・読売新聞(ネットニュース、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061230-00000102-yom-soci)は、日本を代表する優良企業・トヨタ自動車が「名古屋国税局の税務調査を受け、2004年3月期までの3年間で、約60億円の申告漏れを指摘されていたことが30日、わかった」と報じています。

(ユマニスム復興への期待)

これからは、日本国民の一人ひとりが「人間の権利と正しい意味での民主主義国家のあり方」と「正当な経済・企業活動のあり方」について、今まで以上に、それを自分自身の問題として真剣に考えることが必要になると思われます。

前者については、下の二つの優れた記事がヒントになりそうです。

●年のはじめに考える/新しい人間中心主義(1月1日付、東京新聞・社説、http://www.tokyo-np.co.jp/sha/index.shtml

●何を変え 何を守るか *1*「国とは」を問い直すとき(1月1日付、北海道新聞・シリーズ社説1/5、http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032

後者については、経済産業省・情報経済課の新原 浩朗課長(経済学博士)の「日本の優秀企業三十社」を対象とした「優秀企業の条件についての研究」(http://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/niihara/01.html)が参考になりそうです。これは以前にtoxandoriaの日記『「小泉擬装改革」の対極にある日本の「優秀企業の条件」(総集編)』(http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060211)で取り上げた内容ですが、その結論だけを下に再録しておきます。

●結論

(1)「事業領域(ドメイン)を矢鱈と拡大せず、真面目に自分の頭で考え抜き、愚直なほど自分で理解できる範囲の仕事に限定しながら、それに情熱を傾けて取り組んでいる」という点に、優秀企業のトップの特徴が見られる。

(2)優秀企業のトップは、このような愚直さの上に「明快な経営ビジョン」と「非常に高い説明能力」を持っている。

(3)産業分野の新・旧の別、ハイテク・ローテクの別、内需・外需の別などで企業の成長性を論ずる「常識」は、一種の「固定観念」に過ぎない。

(4)優秀企業のトップは、徹底した「現場主義者」であり、「机上の空論(=論理)」に遊ぶことなく現実社会(自然、文化、伝統、習慣、ヒト、カネ、モノ、人的ネットワーク、地域社会など)の「因果律」を大切にしている。

(5)優秀企業のトップは、「主流」に甘んじることなく、むしろ「主流」を厳しく批判できる「傍流の目」を持っている。

(6)優秀企業のトップは、「危機をチャンスへ換える不屈の精神」を身につけている。言い換えれば、それは徹底した「プラス思考」である。

(7)優秀企業のトップは、「身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視する」という感性を身につけている。言い換えれば、それは「徹底したキャッシュフロー管理」による経営であり、「バブル志向」、「売上至上主義」、「株の時価総額主義」、「野放図な設備投資拡大」などとは一線を画しながら徹底したバランス経営を行っている。

(8)優秀企業のトップは、「市場」による規律よりも「自社の企業文化」による規律(ガバナンス)の方を重視している。それは、企業人としての一種の「使命感」でもある。

(9)日本企業に経営戦略がないという“アメリカかぶれ”の政治家・官僚・学者・企業家・経営コンサルタントらの批判は間違いである。欧米式であるか、日本式であるかではなく、要は以上の(1)〜(8)の日本型経営の原点を見据えることである。そうすれば、そこから日本社会のあるべき活力源の姿と光が見えてくる。


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