toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

背任列島シリーズー3


■背任列島シリーズー3:小泉劇場の置き土産(2)



(些細なことと見做し、GDPに消費税が加算されている問題の放置)



安倍首相は、1月5日の経済3団体(経団連経済同友会日本商工会議所)の新年祝賀会で“景気回復が家計にも広がるよう、ご協力いただきたい”と挨拶して労組側へ肩入れのポーズを取りました。しかし、これが「4月の統一地方選挙」と「7月の参院選」を睨んだリップサービスであることは明らかです。そして、このような背筋が寒くなるようなリップサービスとともに、安倍流の歯が浮くような胡散臭い綺麗な言葉(別にいえば、善良な国民を体裁よく惑わすための キララ・コンシェルジュな言葉=美しい国、再チャレンジ、人間力、子育てフレンドリー、テレワーク、イノベーション力(りょく)、ホワイトカラー・イグゼンプション、ソリューション・パートナー、教育バウチャー制度・・・云々)の裏では、冒頭の『猟奇の定義、“バベルの塔”化する美しい国』で既述のとおり、まことに「好戦的で追憶のカルト的な大政翼賛管理国家、軍国主義ニッポン」へ向けての日本改造プランが着々と進んでいます(この詳細は下記記事★を参照乞う)。

★『2006.7.8 付toxandoriaの日記、アートと社会/「危険な美学」を次期・安倍政権へ託した小泉首相の無責任と日本の危機』http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20060708



他方、『世界経済長期予測』(筆者=小峰隆夫・法政大学教授(兼日本経済研究センター・主任研究員)/出典:2007.1.17付・日本経済新聞『経済教室』)によると、2050年までの「GDP・年平均伸び率」は下記の通りであり、まことに厳しい予測となっています。同センターは、日本の2050年の合計特殊出生率を「国立社会保障・人口問題研究所(http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/bk_search.aspx)の低位推計より更に低い1.01%、総人口は9,400万人、高齢者比率は40.0%と推計しています。そして、2010年代以降は労働力人口の減少が次第に大きくなるため、経済成長率がますます減少して、2040年代には殆んどゼロ成長になると見通しています。


日本(2001-05)1.2%、(2006-20)1.4%、(2021-30)1.0%、(2031-40)0.6%、(2041-50)0.0%
中国(2001-05)9.3%、(2006-20)5.5%、(2021-30)3.8%、(2031-40)1.9%、(2041-50)0.9%
米国(2001-05)2.9%、(2006-20)2.8%、(2021-30)2.5%、(2031-40)2.4%、(2041-50)2.3%
E U(2001-05)1.7%、(2006-20)1.8%、(2021-30)1.2%、(2031-40)1.1%、(2041-50)0.9%


ところで、各国の経済活動が比較できるように国際連合はマクロ経済統計について統一基準を定めています。各国の国民経済計算はこの基準に従って作られることになっており、その最も新しい基準は1993年に採択された「93SNA」です。一応、日本は2000年に国民経済計算を「93SNA」に基づく指標へ改定したことになっており、この新基準に従って計算が行われているされています。ところが、実際には「価格概念」に関するかぎり「旧SNA」のまま据え置かれてきたのです。このため、わが国の国民経済計算の「生産者価格」(厳密に言うと、非課税商品を除外した、その他の商品の売上価格)には消費税が加算されています。このため、わが国の名目GDPは消費税制に対して中立ではなく、別に言えば、それは「消費税率が上がると、その時には名目GDPも消費税率の影響を受けて上昇する」傾向があるのです。


例えば、ほぼ前後10年間にわたり一貫して下がり続けていたGDPデフレータが、消費税率が3%→5%に引き上げられた1997年(橋本内閣)にかぎって上昇(0.6%アップ)にぶれた(その前後は各0.4%の下落)という現象が観測されています。つまり、この時には消費税が2%アップしたことに連れて名目GDPの成長率が約1%程度上がった可能性があります。つまり、このことは、わが国の国民経済計算(GDP統計)では「生産者価格」に消費税が含まれているため、その「消費税」も日本の生産者の経済活動が生み出す付加価値の一部と見做されていることを意味します。無論のこと、この問題が特に目立つのは消費税が上がった時ですが、その後消費税が据え置かれる間も、その影響は縮小するもののゼロにはならないと思われます。そして、やがて消費税率が大きく上がる時には、再びGDP伸び率の上げ底が目立つはずです。こんな些細な数字は大したことではないと見做す立場があるかも知れませんが、これからはGDPのパイが大きく伸びない時代だけに、その上、このGDPは凡ゆる政策検討の基準とされる数字であるだけに、見かけ上の好景気とは裏腹に、必然的に衣食を主とした生活必需品の消費支出割合が大きくなる低額所得層が割を食うことが懸念されます(この問題の詳細な論拠は下記記事★を参照乞う/なお、GDPデフレータについては下記記事▼を参照乞う)。


<注>わが国のGDP計算の「生産者価格」に消費税が加算されていることが些細な数字として見逃すことができないのは、下の分析結果からも頷ける(出典:2007.1.31付・日本経済新聞、記事『家計所得と資産効果』)。


(1)企業業績(主に上場企業)の大幅増益にもかかわらず、わが国の家計消費に力強さが現れない原因としては次のことが考えられる。


グローバリズムの進展による、世界的な労働賃金のフラット化
・・・新興国における労働人口の爆発的増加によって代替可能な産業を中心として労働賃金に下方圧力がかかっている。
●大企業を中心とする企業業績の牽引役が海外部門へ集中する傾向
・・・このため、付加価値の多くが現地雇用や現地での設備投資へ分配される。
●所得全体に占める財産所得比率の上昇傾向(直近の内閣府の調査によると、前年度の国民所得と雇用者報酬の伸びが前年比1.3%増であるのに対し同期の配当についてだけ見ても、その伸び率は約5割増であり、結局、配当の増加がキャピタルゲインも含めた財産所得トータルを約3割増まで牽引した/その理由としては、企業の海外生産の利益を反映しやすい連結決算が増えていることが考えられる)
・・・本年から始まる団塊世代の大量退職(2007年問題)は、益々この傾向を強める要因になると考えられる。


(2)このような所得分配環境の世界的な変化は日本国内における格差拡大の大きな背景の一つになっている。


(3)(2)の傾向に対する対応策、及びこのような傾向が進むこと自体への是非を問う問題意識は置くとすると、日本においても、家計がグローバリズム時代に所得を維持し、積極的に財産を形成するには「貯蓄から投資」への流れに乗らなければならないことになる。


(4)(3)の「貯蓄から投資」への流れに乗ることを前提とした場合の中期経済予測モデルによる推計の結果は次のとおり。

・・・『2000年度末の東証株価指数が2000である場合と3000である場合とでのGDP成長率の比較』(2007.1.31の東証株価指数=1726.96)を試みると、後者の場合ではGDPを0.6%押し上げる結果となった。このことからも、GDPに対する1%程度の<消費税による上げ底>が些細なことして見逃せないことが分かる。(東証株価指数については次のURLを参照 → http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_money/w001508.htm

★『提言:消費税制によってぶれる、わが国のGDP測定の問題点』http://www.dori.co.jp/report&publication/econ_r/file5.pdf
▼『ニュース深堀』http://www.h7.dion.ne.jp/~shindan/backto5.html


(参考)名目GDP、実質GDPの変遷・・・(  )内は実質GDP、単位:兆円。
1994:486.5(468.8)、1995:493.3(477.7)、1996:502.6(489.9)、1997:512.2(496.8)、1998:503.0(488.0)、1999:495.2(487.0)、2000:501.1(501.3)、2001:496.8(503.2)、2002:489.6(503.9)、2003:490.5(512.8)、2004:496.1(524.6)、2005:502.9(538.9)


耐震強度擬装事件の震源地であることが疑われる、構造計算ソフト「スーパービルドSS2」の問題)


2005年秋に発覚した「耐震強度擬装(偽造)事件」は、その問題の前代未聞の(無差別大量殺人の予備罪にも匹敵するほどの)深刻さにもかかわらず、結局はトカゲの尻尾切り(小者、小悪党の摘発レベルでチョン!)による強引な幕引き(政治権力・官邸サイドの一人勝ち)で終わったことは周知のとおりです。恐らく、このような幕引きの手法は、「住専問題」と「巨額・銀行不良債権」の処理を巡る“特別なノウハウの蓄積”が生かされているのかも知れません。また、今になって思えば「ライブドアの株価擬装事件」の発覚が「耐震強度擬装事件」の幕引のための煙幕として、タイミングよく使われた可能性も考えられます。奇妙なことに、この二つの「事件」と「小泉劇場」は“擬装”という一点で共鳴現象を起こしていました。この不可思議な共鳴現象の震源地は『深く暗い闇』に取り囲まれているようです。かつて、証人喚問に出たヒューザー・小嶋社長が手に数珠を持ち黒ネクタイを締めていたことが、とても印象深く心の底に残っています。


再び、今度は「アパホテル&マンション耐震擬装」の発覚です。各報道によると、国土交通省は、1月25日にアパグループ(分譲マンションとホテルを全国展開する)の京都市内のホテル2件で耐震強度不足が見つかったと発表しています。その後、この“耐震擬装事件・第二弾”の爆風の被害地は次第に全国へ広がりつつあるようです。2007年1月27日付・朝日新聞は、構造計算書の一部の数値を手計算で修正し差し替えたことについ問いただされた担当の1級建築士が“改竄と言われたらそうだと思う。しかし、耐力(強度)のないものをつくった認識はない。擬装というような悪意を持った不正な行為をしたのではない。”と答えたと報じています。この1級建築士の無責任な応答ぶりには“税金ネコババ”に手を染めた数多の政治権力者たちと共通する雰囲気が漂っています。端的に言えば、彼らに共通するのは当事者意識が欠けていることです。自分自身が嘘をついたり、犯罪行為に直接手を染めたにもかかわらず、どこか他人事のように語っています。演技というよりも、彼らは本気でそう思っているのかも知れません。


つまり、彼らは他に真犯人がいると思っている節があります。恐らく彼らは、自らが所属する組織や上部構造あるいはカネが罹りすぎる現在の選挙システムなどに責任があるとホンネで思っているはずです。そして、たしかに“耐震擬装事件”の場合は「スーパービルドSS2」を使った「国土交通大臣認定構造計算プログラムの評価制度」そのものに根本的な責任があると考えることもできます。それは、ここ一両日の各報道によると、この「スーパービルド」がSS1からSS2へバージョンアップした時にプロセス計算の結果だけを改竄することができるようプログラムが変更されていたからです。これが事実であれば、耐震擬装問題の真犯人は、このような「スーパービルドSS2」の使用を認めていた国土交通省であることになります。国土交通省こそ根本的な事件発生の原因と責任があったことになります。無論、このことによって、数字の『改竄』(それとも、犯人側の見解では改善?)に手を染めた建築士が直接的な責任を逃れることはできませんが。いずれにせよ、このように機能的に不備な構造計算ソフト「スーパービルドSS2」の問題に気づかず放置していた国にも重大な管理上の責任があると考えられます(スーパービルドの問題についての詳細は、下記HP★を参照乞う)。
★『スーパービルドSS2http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A1%BC%A5%D1%A1%BC%A5%D3%A5%EB%A5%C9SS2
★『検証・耐震偽装 悪いのは誰か?何か?(4) 』http://www.janjan.jp/living/0612/0612267175/1.php



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