toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

 アーカイブの役割とは何か(Extra)

今日、2月14日はバレンタイン・ディーですが、この日に因んでExtra Issue(号外)の記事です(厳密に言うと、「聖バレンタイン祭の日」は2月15日ですが、チョコレートの遣り取りは2月14日に行われるようになったようです)。


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ジョン・コリア 『馬上のゴディバ夫人』 John Collier(1850-1934) 「Lady Godiva」 c. 1898 141 x 181 cm Herbert Art Gallery & Museum  Coventry 、England


・・・ジョン・コリアはラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood/フランスの印象派とほぼ同時代の芸術運動)の画家。ラファエル前派は、1848年のイギリスでロセッティ(D.G.Rossetti/1828-1882)らが中心となって起こした絵画芸術の革新運動です。


・・・彼らは、ラファエルロ(Raffaello Santi/1483-1520)以前のイタリア絵画(例えばシエナ派、ジョット、中世絵画など)の中にインスピレーションを見出し、この時代の画家たちの誠実さを手本にしようとしました。彼らの絵画の特徴は、極端な明瞭さと丹念な細部描写、鮮やかで装飾的な色彩感覚です。



ベルギー、ブラッセルのギャラリー・サンテュベール(Galeries St-Hubert/ヨーロッパで最古のアーケード街)にあるベルギーチョコレート・メーカー「Corne」の本店、この右方向に有名な「Godiva」の店がある(2006年8月、撮影)


ベルギー・チョコレートの老舗ゴディバの起こりは、11世紀のイギリス、コベントリー(Coventry/現在はイギリス中央部にある工業都市)のサクソン系領主・ゴディバ伯爵の伝説に因んでいます。


当時、コベントリーの領民たちは領主レオフリック伯爵の暴政(重税など)に酷く苦しんでいました。それを見かねた領主の妻・レディ・ゴディバが夫である伯爵を諌めますが、伯爵は「それなら、おまえが一糸もまとわぬ姿で町中を馬で乗り廻ることができたら願いを叶えてやる」と答えました。


ところが、諦めるだろうという伯爵の意に反しゴディバ夫人は領民たちに“その日は外出せず戸や窓を閉めるように”との布告を出したうえで、全裸で馬に乗り城下を練り歩きました。レディ・ゴディバの強い自己犠牲の精神に心を打たれたコベントリーの領民たちは、布告どおりに、その日は窓を固く閉ざし彼女の領民への優しい思いやりに満ちた行為に応えました。


ゴディバ・チョコレートの創業者であるジョセフ・ドラップスと妻ガブリエルは、このようなレディ・ゴディバの勇気と深い愛に感銘して、ベルギーに誕生した自らのブランドに「ゴディバ」の名を冠した(1926年)とされています(参照 → http://www.godiva.co.jp/about/godiva_history.php)。


ところで、ゴディバ伯爵夫人が一糸まとわぬ姿で町中を馬で乗り廻した時に、夫人の「布告」を守らずに密かに彼女の裸身を覗き見した(peeping)怪しからぬ一人の男がいました。それが世に名高いピーピング・トムで、日本で言えばデバカメ(出歯亀)に相当する者です。


そして、このことから連想されるのが「暴君(暴政の主)」、「公共の意志」、「愚民層(デバカメ)」、そして「公文書(ドキュメント)とアーカイブの役割」です。


つまり、“領主レオフリック伯爵が夫人に命じた内容”と“夫人の布告内容”を共に正確に記録した「公文書(ドキュメント)」が万が一にも保持・保管されなければ、“善政の実現を期待するゴディバ夫人の意志”も”領民の期待(公共の意志)”も、共に、暴君と愚民の意気投合か談合によって「いとも容易く改竄されたり亡き物にされたりする」どころか、「そんなエピソードの片鱗すら存在しなかった」ことにされてしまいます。


ブッシュ大統領によるイラク開戦までの不明朗な経緯(諜報機関による精度が高い情報を捻じ曲げてポピュリズムを意図的に煽った)と、これを無条件に支持した日本政府の立場(これも意図的にポピュリズムを煽るだけ煽りまくった小泉政権)を、現在の安倍政権(小泉・ポピュリズム政権の“釣り銭”か“残滓”のような存在)が未だに“その当時の判断は正しかったと強弁するばかりのブザマな姿”を見るにつけ、この「ゴディバ伯爵夫人のエピソード」の教訓が身に滲みるように分かります。


<参考1>『米統合参謀本部議長、イラン政府のイラク介入説を疑問視』

・・・ワシントン発・CNN(ネット)は、米統合参謀本部のペース議長は2月13日に「イラン政府がイラク国内のシーア派武装勢力に武器を供給しているとする米軍上層部の主張」に疑問を投げかけたと報じている(参照、 http://www.cnn.co.jp/usa/CNN200702140009.html)。


<参考2>『CIA工作員身元漏えい裁判でブッシュ政権の情報操作が明るみに』

・・・2月14日付・読売新聞(ネット)は、米中央情報局(CIA)工作員身元漏えい事件の裁判(ワシントンの米連邦地裁で審理中)で、著名なジャーナリストが次々と証言台に立ってブッシュ政権による情報操作の実態を明かしつつあると報じている(参照、http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070214id24.htm)。


ともかくも、その結果として、後に残るのは「暴君」と「愚民」が談合して擬装した「暴政の現実」だけという次第になります。また、ここから「公共の意志」(このエピソードの場合はゴディバ伯爵夫人の善政の意志と多くの領民たちの善政への期待)の実現ということが如何に困難であるかが理解できる筈です。


それは、いつの世であっても「暴君」と「愚民」はデバカメ精神を共有する存在であるからです。ゆめゆめ「暴君」と「愚民」による“両デバカメ連合”には油断が禁物だということです。これは、二つの映画『墨攻』(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070209)と『武士の一分』(参照、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070211)を鑑賞した後に強く残った印象でもあります。そのせいか、食したチョコレートもいつになく苦味を強く感じてしまいした。


(参考資料)


ベルギーのチョコレート、http://page.freett.com/bugyonawa/chocolat/chocolat.htm
チョコレート用語集、http://www.crownfoods.co.jp/chokorateyougoshu.htm
カカオ豆とは、http://www.crownfoods.co.jp/chokorateyougoshu.htm
デバカメ(語源用語辞典)、http://gogen-allguide.com/te/debagame.html


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