toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

アーカイブの役割とは何か(Extra2)


◆これは、[2007.2.24付toxandoriaの日記/国民一般が自覚すべき「権力の可視化」の問題、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070224]へsophiologistさまから頂いたTB(http://d.hatena.ne.jp/sophiologist/20070229)へのコメントを独立させて記事にしたものですが、若干の加筆があります。



ジョン・コリア 『馬上のゴディバ夫人』 John Collier(1850-1934) 「Lady Godiva」 c. 1898 141 x 181 cm Herbert Art Gallery & Museum  Coventry 、England


・・・ジョン・コリアはラファエル前派(Pre-Raphaelite Brotherhood/フランスの印象派とほぼ同時代の芸術運動)の画家。ラファエル前派は、1848年のイギリスでロセッティ(D.G.Rossetti/1828-1882)らが中心となって起こした絵画芸術の革新運動です。


・・・彼らは、ラファエルロ(Raffaello Santi/1483-1520)以前のイタリア絵画(例えばシエナ派、ジョット、中世絵画など)の中にインスピレーションを見出し、この時代の画家たちの誠実さを手本にしようとしました。彼らの絵画の特徴は、極端な明瞭さと丹念な細部描写、鮮やかで装飾的な色彩感覚です。


・・・コベントリーの領民たちは領主レオフリック伯爵の暴政(重税など)に酷く苦しんでいました。それを見かねた領主の妻・レディ・ゴディバが夫である伯爵を諌めますが、伯爵は「それなら、おまえが一糸もまとわぬ姿で町中を馬で乗り廻ることができたら願いを叶えてやる」と答えました。


・・・しかし、当記事の観点(アーカイブによる権力の可視化の重要性)からすれば、善意のレディ・ゴディバではなく、暴政の主である権力者・領主レオフリック伯爵(比喩的にいえば、現代の民主主義国家・日本では小泉前首相や安倍首相ら)こそが全裸になって乗馬するべきです。


・・・国民の多くにとっては、そんな薄気味が悪い男ども(小泉や安倍ら)の裸体は見たくないというのがホンネかも知れません。しかし、健全な民主主義を維持するには、彼らの醜悪な裸体を凝視する努力こそが国民一般に求められるのです。(参照 → [2007.2.14付toxandoriaの日記/Souvenir Ser./アーカイブの役割とは何か(Extra)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070224]


・・・・・・・・・・以下、本文・・・・・・・・・


sophiologistさま、TBありがとうございます。


今回のTBは“アーカイブシリーズ”へのヒントを与えてくださいました。そして、ご指摘の「メディアポイントの理論」は日本人一般の根本的弱点(多くの日本人は真にフッサールの超越論的意識が理解できていないこと)を鋭く抉っていると思います。


思うに、メディア総掛かりの近年における「支持率万能型民主主義」は悪しき「バックラッシュ政治(backlash)の誘発」(逆回転・逆噴射・開き直り政治=小泉劇場政治→安倍政治への流れ/現状=権力の横暴化・右傾化と人権軽視の空気が助長)をもたらしていると考えられます。


<参考>伊吹文明文科相が“人権だけ食べ過ぎれば人権メタボ症候群だ”と発言!
・・・本日付の各報道によると、伊吹文明文科相が「教育再生の現状と展望」と題する講演(25日、長崎県長与町で開かれた自民党長与支部大会)で“人権だけを食べ過ぎれば、日本社会は人権メタボリック症候群になる、また、大和民族がずっと統治してきたのは歴史的に間違いのない事実なので、日本は極めて同質的な国だ”と発言しています。まさに、これは、上で述べた「バックラッシュ政治(backlash)の誘発」(逆回転・逆噴射・開き直り政治)」の中にいる政治権力者の慢心した発言です(参照/下記URL★)。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070226k0000e010030000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070226ia01.htm
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2007022501000332.html
http://www.asahi.com/politics/update/0225/010.html


それは、我われには「民主主義」以外の選択肢がないにもかかわらず、その民主主義は「アローの不可能性原理」(参照/下記URL★))が明らかにしたとおり、「客観的な真理」を保証する万全なものではないということによります。
http://plaza.umin.ac.jp/~kodama/ethics/wordbook/arrow.html


そして、この民主主義政治において「客観的な真理」を保証するために必要な二つの観点があります。


●究極的に民主主義において選択される政策(一般的には多数決で決まる)の「客観的な真理」の保証は、そのことに関する将来の議論が少数派(その多数決時点での異論)の敗者復活の可能性を十分に担保できるという点にある→ 観点(1)


●この「将来の議論が少数派の敗者復活の可能性を担保する仕組み」を提供するのが、いつでも客観的な民主的議論を可能とするアーカイブによる「権力の可視化」ということである→ 観点(2)


日本では、司法の場面ですら、この(1)と(2)についての認識が根本的にスルーされている(軽く見過ごされている)ように思われます。それは、数多の冤罪事件の発生が傍証しています。まして、一般国民レベルにはこの認識が殆んど存在しないようです。これが日本人の「親方日の丸意識」(=長いモノには巻かれろ意識)を強固に支えており、昨今の「支持率調査民主主義が悪しき逆噴射(バックラッシュ)政治を誘発する」ことの背景となっていると思われます。


例えば、アメリカでは最高裁判決による「現実の悪意の法理(actual malice)の判例、1964」(参照/http://www.lectlaw.com/def2/m006.htm)があります。これは政治権力者等の「名誉毀損問題」などの場合にクローズアップされる法理です。端的に言えば、それは“悪意のない間違った報道やブログ・コメントなど”(その時は、公然たる名誉毀損とされる場合でも被告側の立場)は責任を問われないという、表現の自由の根本にかかわる重要な判例です。残念ながら、わが国では、言論の自由に関するこのような最低限度の民主主義の押さえが効いていません。


そのうえ、権力者サイド(政治権力、行政権力あるいは村上ファンドホリエモン事件等のように莫大な金権力がある被告の立場など)が、仮に実刑を喰らったとしても、実利的な意味で、結局は権力者サイドが有利な立場に立つ現行法制のあり方では、このまま「プロバイダ責任制限法」(参照/下記URL★)などが厳密に適用される空気が強まることにでもなれば、「共謀罪」や「ゲートキーパー法」(分かりやすく言えば公認の密告制度)との絡みでプロバイダーのみならずコメントの書き込みをした人やブロガー自身も名誉毀損などの責任を厳しく問われる恐れがあります。
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/haiteku/haiteku/haiteku402.htm


わが国における、このような「民主主義ガバナンス」の根本的欠陥を克服するには、我われ一般国民がネットのみならず凡ゆる既存のメディアを活用して、必ずしも「絶対的に正義を代表するとは限らない権力」を日常的に監視・批判する手段を多様化するという観点に立つメディアリテラシーが特に重要です。そして、その要となるのが「アーカイブによる権力の可視化」ということです。


[関連記事」


2007-02-24 [暴政]国民一般が自覚すべき「権力の可視化」の問題 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070224
2007-02-21 [暴政]小泉前首相らの『悪辣・冷酷・外道』の証明 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070221
2007-02-20 [歴史の評価] 再々考「パパ、歴史は何の役にたつの?」 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070220
2007-02-17 [情報の評価/Souvenir Ser.] アーカイブの役割とは何か(Ⅲ) 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070217
2007-02-14 [情報の評価/Souvenir Ser.] アーカイブの役割とは何か(Extra) 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070214
2007-02-11 [情報の評価/Souvenir Ser.] アーカイブの役割とは何か(Ⅱ) 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070211
2007-02-09 [情報の評価/Souvenir Ser.] アーカイブの役割とは何か(Ⅰ) 、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20070209


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