toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

改憲論に潜入するカルトの誘惑(1)


ドイツの風景、朝


(プロローグ)


5月7日(月、PM7:30〜)に放送された「NHKクローズアップ現代:9条を語れ 憲法は今」で、下記の事実(●)を知り衝撃を受けました。


●財界の改憲論の主張(経済同友会が火付け役となった)は、グローバリズム経済で世界に伍して大競争に勝ち抜くためには集団的自衛権の行使を容認して「世界の経済戦線で活躍するビジネス現場を自衛隊が守るべきであり、そこでは場合によって先制攻撃も辞すべきでない」と考えていること。


●格差拡大が進みつつある日本社会の底辺へ押しやられた、いわゆる負け組みの人々の中で一種の「職場としての戦争願望から改憲を望む」若者たちが増えつつあること。


今回のNHKクローズアップ現代が提起したのは、このような状況(市場原理主義というカルトに毒された両極端の現象=日本国内からの戦争願望の拡大)の中で「改憲論が主流になっている財界の中から護憲を唱える戦中派財界人が訴えを始めた」ことを我われ日本人はどう受け止めるべきかということのようです。


たしかに、ここで見られる典型的な「改憲の動機」は、ナショナリズムの熱狂に取り憑かれ始めた時代のナチス・ドイツと軍事ファッショに席巻されて太平洋戦争へのめり込んで行った時代の日本の発想にそのまま重なり、このNHKクローズアップ現代で取り上げていた「護憲を唱え始めた戦中派財界人の危機感」の原点は、まさにここにあるのではないか、と思われます。別に言うならば、これはまさに現代日本が一種のカルト化の淵に立たされているということのようです。


一般的なメディアの解説によると、シュレーダーからメルケルへ首相が代わったドイツも、サルコジが大統領に選ばれたばかりのフランスも“右傾化”しているそうですが、そのように一束にするのは余りにも乱暴すぎる、単純すぎると思われます。だから、日本も“更に右傾化”(というより極右化?)すべきというのでしょうか? 日本の正統保守の見識は何処へ行ってしまったのでしょうか?


ところで、何故このように「異様な改憲の動機」が生まれてくるのかを考えるヒントとなる記事を以前に書いたことがありますので、一部加筆のうえ再録しておきます。ただ、一つの記事としては些か長すぎるので4回に分けて書きます。


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[副題]総カルト化する日本が学ぶべき欧米の知恵(1)



1 絶対値仮説と相対知仮説


 西垣通氏(東京大学大学院・情報学環教授)によると、人間の知能については次のとおり二つの立場の異なる見方があるそうです。(2004.9.16付・朝日新聞、文化<知能というもの>)


(1)絶対知仮説


この根本にあるのは、我われ人間を含めた生物と環境世界は一体不可分だという関係論的な考え方です。また、この仮説に従うと、人間の「知能」は論理操作能力と記憶力の組み合わせだということになります。別に言えば、大宇宙には「絶対的な真理の大陸」、更に言い換えれば「神の知」(絶対的知から成る神の世界)の領域があるとする立場、つまりキリスト教の根本にある考え方です。そして、我われ人間は、そのほんの一部を分有している存在に過ぎないことになり、その「知」は、「神の領域」(まさにプラトンのイディアの世界)、「人間の自由意志」及び「人間が操る抽象論理」の三要素で構成されるということになる訳です。


(2)相対知仮説(暗黙知仮説)


知能は人間という生物種に特有なもの、つまり相対的な存在だという考え方です。この立場によると、我われは、人間という生物種に特有の知覚器官と脳神経系を媒介にして周辺の環境世界に対処していることになります。この立場からすると、我われ人間の知は生物進化の結果として偶然に得られたものであり、それが絶対的に正しいという根拠は存在しないことになります。つまり、この場合における我われ人間の知能は、我われ人間にとってのみ役に立つ存在に過ぎないということになるのです。つまり、人間は、人間だけのための「相対知」を超えた「暗黙知」(異なる生物種の立場からすれば、多くの相対知が存在し得ることになり、メタ次元の暗黙知が想定できるため)にも支配されていることになるのです。

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