toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

米国民『オバマ国民皆保険』拒否の謎、“ランディアンカルト感染症“への警戒の勧め

toxandoria2009-08-25



<注記>


この内容は、初めの表題が分かりにくかったので、いったんUP済みの下記★を再掲するものだが、若干の加除・修正と省略部分がある。


★[原理主義の罠]ポスト総選挙に向けて、“ランディアンカルト感染症への警戒”の勧め、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20090824


ドイツ、レーゲンスブルクの風景(Souvenir Ser./ 2007年、春)







(米国における医療保険制度の現状=恐るべき惨状)


少し古いことだが、「2007年春のドイツ旅行」の準備で入手した、海外旅行保険傷害・医療保険会社の広告(参照/下記★) に驚いたことがある。それによると、米国を想定した「1ヶ月分の入院費(手術・治療費を含む)=3000万円」と書いてあったが、それは『海外旅行中に軽い脳梗塞を発症し、緊急手術後に約1ヶ月入院し容態が安定して日本へ搬送するケースでは、家族の往復航空券(3人分、130万円)と日本への搬送費(180万円)を除いた、純然たる治療・入院費用の総額が約3,000万円』ということであった。


★AIU、http://www.myhp.co.jp/aiu/kaigairyoko/?gclid=CP2N4b_NjI4CFQmZbgodn2zZEg


<注>


「対GDP医療費総額の国別比較」という論点があるが、ここでスポットを当てるのは、あくまでも個別の病気にかかる治療費用(金額)の大きさである。因みに、下記資料(▲)によれば、「対GDP医療費総額の国別比較」で見た場合の日本の順位は、30か国中21番目となっている。


▲医療提供体制の国際比較2007(日本医師会)、http://www.med.or.jp/teireikaiken/20070207_2.pdf


ところで、このパンフレットに書いてある事例を日本に当て嵌めれば凡そ150〜200万円と推定されるので、アメリカで『脳梗塞発症→緊急手術→1ヶ月入院』の場合は 少なくとも日本の15〜20倍の治療費(実費)が必要ということになる。しかも、日本の場合は、健康保険の制度上で「高額医療費支給手続き」を取れば1ヶ月当たり約7万円超の差額部分が戻る。つまり 、1ヶ月当たり支払治療費の上限が約7万円ということになる。


一方、先進諸国の中で唯一「国民皆保険制」を採らず、医療保険運用の主体部分を市場原理に任せつつ民間保険会社へ解放しているアメリカでの「医療保険制度」別対象者の概要は下のとおりである。


(1)民間医療保険AIGなど民間保険会社/市場原理で運用)1億7,130万人


(2)公的医療保険(市場原理のフレームから落ちこぼれた弱者)、http://www.cms.hhs.gov/home/medicare.asp


 2-1 メディケア制度(Medicare/高齢者・障害者、低額保険料負担)4,050万人


 2-2 メディケイド制度(Medicaid/低所得者、低額保険料負担)2,910万人


(3)無保険者(Medicare or Medicadeから排除された人々)4,060万人→現在、約5,000万人まで増加!


(以上は、アメリカ保健省によるデータ(2002年)/出典:http://www.med.or.jp/nichinews/n170520h.html


当然のことながら、ここで特に驚かされるのはアメリカの治療費用がベラボーに高額であることだ。因みに、下記資料(▲)によると、その他の病気の場合も日本と比べてアメリカの治療費が異常に高いことが分かる。


アメリカの医療費について、http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/america.html


子宮筋腫の治療費 日帰り外来手術 100万円以上


虫歯の治療 2本で1200ドル 13万円

嘔吐と下痢 ロタウイルス感染の子供2人の5日間入院費 140万円


カルテのコピー  1ページ数ドル


盲腸手術入院の都市別総費用ランキング(2000年AIU社調べ/都市名/平均費用/平均入院日数)
・・・ 1位(ニューヨーク/243万円/1日)、2位(ロサンゼルス/194万円/1日)、3位(サンフランシスコ/193万円/1日)、4位(ボストン /169万円/1日)、5位(香港/152万円/4日)、6位(ロンドン/114万円/5日)、11位(グアム/55万円/4日)


先進諸国の中で唯一の例外として「国民皆保険制度」を採らず、医療保険制度の主体部分を市場原理に任せているアメリカで今まさに起こっているのは、医療現場における医療サービス内容の劣化だけでなく、より高額の治療費を医療現場へ絶えず要求しつつ患者を費用面から絞り上げていることだ。そのため、治療費を賄う借金について取り立て会社が患者の持ち家に抵当権を設定したり、場合によっては債務者への逮捕状を請求したり、あるいは関連裁判や弁護士費用までをも次々とその借金に加算するという恐るべき事例が発生している。そして、それに応じられない患者(弱者の立場に落ちた一般国民)は、最終的に医療サービスから排除され無保険者になるという、まさに地獄絵図の如き悪循環が生じている。


しかし、市場原理下におけるアメリカの医療保険制度の欠陥がもたらす悲劇は、それだけではない。ある程度以上の安定収入があり、高額の民間医療保険に加入している中産層以上のアメリカ国民が、いざ病気に罹るや予想もできなかった悲惨な目に合うケースが増えている。それは低所得者と同じことで、その行き着く先に待つのは 「→ Medicaid or Medicare → 無保険者(=一切の医療サービスを受けられず、どのような難病であろうが患者はもがき苦しみながら死を待つのみとなる!)」という地獄のコースである。そして、その原因の一つが営利優先の保険会社による“医療保険金の支払拒否”である。



(“ランディアンカルト感染症“への警戒の勧め)


8月21日にバーナンキ米連邦準備理事会FRB議長が“世界的な経済成長の回復への見通しは短期的に良好”だとの認識を示したと報じられたが、これは、景気回復が近づいているという考えをFRB議長が正式に表明したものとみられている(情報源 → http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11131020090821


しかし、米オバマ政権の中枢には「国家経済会議」(NEC/National Economic Council)委員長のローレンス・ヘンリー・サマーズ(首尾一貫してグローバル市場原理主義を強く主張してきた人物)に限らず“国家的ポンジー・ビジネス(リーマンブラザーズ・小泉・竹中・ホリエモン村上ファンドらが囃したネズミ講型詐欺ビジネス)の考案者”と思しき人物らの多くが巣食っており、経済回復への兆しが見えるとともに、これらネオリベ新自由主義思想)派の蘇生と「小さな政府」への揺り戻しが必ず起こると見るべきである。


その証拠に、アメリカの内政面では、オバマ政権が、今や「医療保険改革=国民皆保険制度の導入・案」に対する予想以上の国民(=大部分の製薬会社等によるロビイスト活動とネオリベ派の先導に乗せられた国民層)からの猛反発で窮地に立たされていると伝えられており、ここには建国時いらいのアメリカン・ポピュリズム(自由原理主義の根深い伝統が影を落としているようだ(関連参照、下記◆)


◆【緯度経度/産経】ワシントン・古森義久/医療保険改革 オバマ支持を減らす、http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090822-00000056-san-int ← この記事は、ネオコン支持派の古森記者が、いつものごとく「オバマ政策への批判」のスタンスで書いているが、却って、その奥底に潜む“ネオコン派の自縄自縛的な矛盾”が垣間見えて興味深い。


それにしても、上で見たような「米国における医療保険制度の現状=恐るべき惨状」にもかかわらず、これを欧州あるいは日本並みの方向へ改革しようとするオバマのプランに国民側からの猛反発が起こること自体が、竹中平蔵小泉純一郎らの如き市場原理主義かぶれの輩は例外としても、大方の日本国民には理解できないはずである。


ところで、アメリカン・ポピュリズム(自由原理主義の根深い伝統とは、言い換えれば『私的所有権の最優先、利潤動機の最大限の肯定、個人経済活動の最大限の評価』の三つの価値観を徹底的に追及するという「アメリ保守主義」の特異性であり、これがアインランド哲学と融合して過激化したのがネオコンである。従って、それは欧州伝統のメジャーな保守主義(conservatism)と全く異質な地点に立つ精神環境である。しかし、この点こそが一般の日本国民にとっては最も分かりにくいところである。


しかしながら、「私的所有権、利潤動機、個人経済活動」の三つが“一定のガバナンスの範囲で節度よく実行される”のであれば、それはむしろ望ましいことなのだが、市場を介しつつ強欲ハゲタカらの為すがままに、ミンスキー理論ミンスキーの金融不安定仮説 → 参照、http://memoria.exblog.jp/7043100/を否定しつつ、これらを投機方向へ無限大に拡張できるとする傲慢な暴走思考がアメリカン・ポピュリズム(自由原理主義の問題点なのだ。そして、それを根底から支えるのが、『徹底した利己主義、差別主義、歴史的近代性の否定』を強化したアイン・ランド(Ayn Rand、本名Alisssia Zinovieva Rosenbaum/1905-1982)の「客観主義哲学」(Objectivism)である。


一言でいえば、アイン・ランドの精神環境とは「人間の傲慢で独善的な利己意識を究極まで濃縮したカルト」(=現実には起こり得ない事象をリアリズム視するカルト)であり、その「客観主義哲学」なるものの主柱は次の六本である。


●社会など或る集団の上に立ち、人々の上に君臨する「共通善」なるものは「偽善」に過ぎない


●歴史的に見ると、平和主義・博愛主義・利他主義の宣言によって行われた革命なるものの行く末は血の海であった


●他人に対して行い得る唯一の「善」は「触れるな!干渉するな!」ということである


●人類の歴史は、人間が独創(創造)したものを自然に対して付け加えることで進歩してきた


●この人間の独創は“良きものを創造したい”と願う人間の「個人的欲望」から生まれる


●「自分中心主義」は「偽善に満ちた利他主義」より優れている


(関連参考情報)


▼2005-03-26toxandoriaの日記/ 作家アイン・ランド、米国ユニラテラリズムのもう一つの『源流』、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050326


▼ジャパニーズ・ランディアンカルトの腐葉土の一つ? → http://www.asyura2.com/09/senkyo69/msg/590.html


このため、アメリカでは共和党アメリカン保守)民主党(リベラル)の別を問わず、ランディアン・カルトと呼ばれる「客観主義哲学」(Objectivism)に深く毒された人々が数多く存在しており、ブッシュ政権に巣食ったネオコンはそのような精神風土から巨大化して生えた怪異な毒茸のような存在である。しか も、このランディアン・カルトの恐ろしさは、先ずはとりあえずヒッソリと物静かに恰も皮膚感覚を濾過するかのようにヒトの心身へ、さりげなく浸透するところにある。我われ は、オウム真理教統一教会・真光教あるいはSK学会らの如くに、必ずしもケバい「ヒカリもの」だけがカルトとは限らぬことに留意すべきである。


今、わが国では「8/30総選挙」で“民主党圧勝・予測 → 政権交代可能性の拡大”が殆どのメディア情報を席巻している。日本でも漸く民主主義の前向きの流れへのワンステップが胎動し始めたという意味で、この政権交代が実現するのは、それはそれで結構なことだ。しかし、「小泉・竹中改革劇場」がもたらした<偽装改革劇の真相>が実は日本社会への<米国型ランディアン・カルト>の「年次対日改革要望書」を介した注入であったという現実があること、そして<とりあえず今のところは物静かそうに見えるランディアンカルトの信者・信奉者・シンパ>たちが民主・自民両党の奥深くに潜伏しつつ着実に拡がっていることを忘れるべきではない。


この視点を忘れると、 たとえ民主党政権が実現しても、再び、わが国で「強欲資本主義」と「社会保障(≒国民皆保険制度)破壊主義と格差拡大主義」の嵐が吹き荒れる恐れがある。 従って、今やオバマ政権が「医療保険改革=国民皆保険制度の導入・案」に対する予想以上の米国民(=民間保険業界・製薬業界等のロビー&広報活動で洗脳された多くの国民層)からの猛反発で立ち往生していることを、それはアメリカの出来事だと看過すべきではない。そして、竹中平蔵田中直毅らの言葉を信用してアメリカを手本とする「社会保障(≒国民皆保険制度)破壊主義と格差拡大主義」を日本に招き入れることだけは絶対に許すべきではない。


因みに、ランディアンカルト感染についての自覚が希薄だという点からすれば、文化環境(一般国民の皮膚感覚)を通して、つまり“政治的衛生観念の希薄さ”を侵入口として密かに心身へ深く浸透する類のカルトへの免疫効果が期待されるのは、現在も、チェコボヘミア文化に確固として息づく15世紀「ヤン・フスによる強烈な批判精神の伝統」である。この「ヤン・フスの強烈な批判精神の伝統」を取り上げた記事(下記◆)をぜひ参照願いたい。


◆2009年春/チェコプラハの印象(1)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20090620


【Disinfection】Lara Fabian - Broken Vow