toxandoria:旧「toxandoriaの日記」

W,Ⅴ.O.クワインによれば、地理や歴史から物理学や数学、論理学までに至る知識や信念の総体は周縁部(フリンジ)でのみ経験と接する人工の構築物ないしは「境界条件が経験であるような力(持続的ダイナミズム)の場」とされ、この描像の下で理論(又はイデオローグ)と合致しない観察結果が得られたとき生ずるのは何らかの特定の仮説の撤回ではなく、信念体系内部の各命題に割り当てられていた真理値の再配分であり、そこには多くの選択の余地(つまり無限の可能性が絶えず拓ける状態)がある。中山康雄著『科学哲学』(人文書院)

点描ポーランドの風景/クラクフ編(Appendix)、2010.7(ポーランドから衆愚政治に踊る日本への手紙)

toxandoria2010-08-11



<注記>当シリーズ記事の「クラクフ編(1)、(2)、(3)」については下記を参照のこと。なお、右上の画像はhttp://passionplay.tabata3.com/index2.htmより。


点描ポーランドの風景・クラクフ編(1)、2010.7(ポーランドから衆愚政治に踊る日本への手紙)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100731


点描ポーランドの風景・クラクフ編(2)、2010.7(ポーランドから衆愚政治に踊る日本への手紙)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100803


点描ポーランドの風景・クラクフ編(2)、2010.7(ポーランドから衆愚政治に踊る日本への手紙)
http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100806


【参考画像】ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世(位1978- 2005)・・・画像はウイキメディアより


(ハマコ―逮捕に象徴される日本政治の“場に流れるままの貧相”と対比すべき、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世のシュラフタ民主主義の伝統による積極意思の迫力)


背任容疑で逮捕された民放テレビ・オチャラケ政治番組の人気コメンテータ・ハマコ―は、噂によれば三十数億円の借金を背負っているらしい。これ以外の低劣な芸能化政治トークショー出演者や人気コメンテータ&芸能人らも恐らく似たり寄ったりの連中なのであろう。


これら民放テレビの低劣さの根底にあるのは、その低劣さ故の大衆一般(衆愚)向けの表層的な分かり易さということに止まらず、ソコには実はそれより忌むべきモノが隠されている。それは、我われ日本人が、どのような局面であっても確固たる自己の考え・主張よりも“その場かぎりの親密な空気を最優先させる”という悪しき習性を身に帯びており、そこから絶対に逃れられぬという現実があることだ。


言い換えれば、低劣な民放テレビの政治ショー番組の内容(コメンテータや芸能人化した政治家らが一方的に語り、わめき散らしているだけであるにもかかわらず、恰も視聴者自身が、その場その場の討議に参加しているとする錯覚に満ちた空気)に視聴者ら(一般の日本国民の多く)が上っ面だけのめり込み、殆ど無意識に付和雷同し、かつそれに満足してしまい、何一つ新たな変化・革新への意志が芽生えず、巧妙に誘導された過去の呪縛へのまどろみの中で、ほぼ完璧に満足させられてしまうということだ。


ところで、ヨハネ・パウロ2世は、ポーランド出身の第264代ローマ教皇で本名はカロル・ユゼフ・ヴォイティワ(Karol Józef Wojtyła)、クラクフの南西ヴァドヴィツェの生まれであり、その在位期間は、近現代における歴代教皇のなかで最長の27年で、これは全教皇の中でも3番目の長さである。


ヨハネ・パウロ2世は、在位期間中に計14回の回勅(全世界の聖職者・信徒あてに書簡の形で発信する基本文書)を発信しており、その内容は「教義、信仰、教会史、生命、人権、家庭、女性、倫理、労働、環境、平和、発展」など、広範囲の問題に及ぶ。



これには、現代世界に生きるローマ教会が、新たな道標(みちしるべ)を全世界の人々へ示すとともに教会が直面する場以外の諸問題に対しても真理と正義の光を、そして教会としての発言と行動を積極的な意思で示すという意味があったのだ。


特に、ポーランド人指導層の一人としてシュラフタ民主主義精神を引き継ぐヨハネ・パウロ2世(クラクフ・マリア教会の司教を務めていた)は、戦前のポーランド内に約330万人(1934年/全ヨーロッパには約600万人)が居住していたとされ、その多くがアウシュビッツなどで辛酸を舐めたユダヤ人との和解と対話に真摯な取り組みを行ったことが知られている。


例えば、1994年4月8日にバチカンで行われた「ナチスの大虐殺で犠牲になった数百万人のユダヤ人を追悼する教皇庁主催のコンサート」(カトリック教会主催の追悼行事はこれが初めて、約7500人のホロコースト生存者が世界中から列席した)で、“ユダヤ教カトリックの和解が確実に進んでいることに喜びを表し、人類は二度とこのような罪を犯してならない”と語った。


また、1997年10月30日〜11月1日には、教皇庁の紀元2000年大聖年神学・歴史委員会が「キリスト教世界における反ユダヤ主義の根源」をテーマとする教会間会議をバチカンで行っている。


当然ながら、ヨハネ・パウロ2世が他の宗教や異文化との交流にも非常に積極的で、プロテスタント諸派東方正教会、あるいは仏教界との和解と対話への努力を継続的に行い、大きな成果を上げたことは周知のとおりである。


因みに、冷戦体制下の東欧全般で有効だったはずの共産主義シュラフタ民主主義とカトリックを伝統とするポーランドでは基本的に体質に合わなかったため、ソ連支配下共産主義体制に対するポーランド国民の本心は事実上の面従腹背というのが現実であったと思われる。


このような中、ポーランド共産党政権は、狡猾にも、ヨハネ・パウロ2世がローマ教皇になる(1978〜)とカトリック教会を国民を宥めつつ政権を安定化させる道具に利用することを考えた。このためカトリック教会は一種のサンクチュアリ(聖域)化して、共産党政権にとっては皮肉なことだが、その後は独立自主管理労働組合「連帯」の幹部が逮捕されてもカトリック教会(ヨハネ・パウロ2世)の介入によって彼らの命は守られることになった。


ここで見られるのは、やはりポーランドシュラフタ民主主義という名の“理念型政治優位の伝統”ということである。この精神と比べれば、我が国の政治が、ひたすら「新自由主義市場原理主義」の作為から抜け出せず「『単純な意味での“小さな政府”=財務官僚体制』>『政治=民主主義理念の重視』」という錯誤(政治の適正配分の責任を放棄したトリクルダウン幻想)のドグマに嵌り、まことに貧相な非リアリズム政治のレベルで停滞し続けていることが分かる。


<注記>シュラフタ民主主義については、冒頭に掲げた当シリーズ(1)~(3)の記事を参照のこと。


(2010年オーバーアマガウ・キリスト受難劇の成功に見る、ポーランド出身ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の先見性)


【画像】オーバーアマガウ村の景観・・・一枚目の画像はウイキメディア、二枚目はhttp://www.globalvipvacations.com/searchtoursdetails.aspx?id=138。三枚目は
http://passionplay.tabata3.com/index2.htm、四枚目は
http://www.oberammergau-passion.com/en-us/photo-and-video/pictures/passion-play-2010/slideshow-passion-play-2010.html、五枚目はhttp://passionplay.tabata3.com/index2.htm、より







2010年で41回目を迎えるドイツ・バイエルン州・オーバー・アマガウ(フレスコ画で彩られた美しい町並みと木彫りで有名な人口・約5千人の村)で行われる「キリスト受難劇」の歴史(原則、10年ごとに行われてきた)は1633年に始まり、377年目にあたる今回(2010年、約3千人の村民が出演)も、その行事は無事に開催中である。


しかし、この「受難劇公演」そのものが“受難の歴史”であり、特に20世紀初頭のヒトラーナチス)・ドイツ時代〜今回・公演までのプロセスは辛酸を味わう歴史であった。なぜなら、これを観劇したヒトラーが悪徳なユダヤ人迫害の“確固たる口実”をソノ中に発見し、ソレを悪用してしまったからだ。


「受難劇公演」の主催関係者(演出、脚本担当)およびミュンヘン大学・神学部ののルートヴィヒ・メーデル教授(カトリック神父)らの努力によってカトリック的解釈とユダヤ人側の解釈の溝は埋まりつつある。


しかし、絶対に見逃せないのは、何よりもこのようなカトリックユダヤ教の間の溝が狭まりつつある背景には1965年以来の約20年にもおよぶ、ポーランドシュラフタ民主主義の精神に裏付けられたヨハネ・パウロ2世のユダヤ教との関係改善と対話努力という実績が存在することだ。つまり、そのあいだローマ教皇庁は「ユダヤ人はイエスの死に責任がない、イエスユダヤ人であった」とする歴史的「回勅」を発行し、同じ趣旨の「演説」と「宗教関連行事」を繰り返してきたのである。


<参考資料1/オーバー・アマガウ受難劇関連>


アルプス山麓、祈りの大舞台(NHKスペシャル)、
http://www.nhk.or.jp/special/libraly/00/l0007/l0722s.html


オーバーアマガウ・キリスト受難劇、http://passionplay.tabata3.com/


ドイツ大使館/オーバーアマガウのキリスト受難劇、
http://www.tokyo.diplo.de/Vertretung/tokyo/ja/09__D_20Info/PD/Ku/Event__Tourismus/Passionsspiel.html


Passion Play Oberammergau,http://www.passionplay-oberammergau.com/


オーバーアマガウの観劇ツアー、http://passionplay.tabata3.com/index2.htm


生まれ変わったキリスト受難劇、http://passionplay.tabata3.com/myrtos.htm


<参考資料2/当シリーズ(3)、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20100806へのコメント&レスの転載>


(FMdMRKf5Fwより転送)


01. 2010年8月06日 23:55:28:いつもながらの博識と的を射る論評に感服しています。


小生も15年前、アウシュビッツを訪ねる機会がありました。まだポ−ランドが旧ソ連支配から脱して日が浅く、失業とインフレの進行で国民生活は危機的と聞いていて、物見遊山的な旅行団に加わることに、すこし戸惑いがありました。


しかし、ワルシャワクラクフに行って意外な感じを受けました。「悠久のポーランド」と題した小文を某誌に投稿しましたが、「ゆったりと広がる広がる田園に併せて、時もゆうゆうと流れているような豊かさをかんじた。」ことを思い出しました。


その背後に、ご紹介のような「歴史」の裏付けがあるということなのですね。
toxandoria 2010/08/07 18:37


( YqqS.BdzuYk56:35Lt1MOeqIより転送)


2010年8月07日 16:51:51: YqqS.BdzuYk56: 35Lt1MOeqI「悠久のポーランド」・・・美しい森と平原が拡がるあの広大な景観にまさに相応しい言葉ですね。せっかちでキョロキョロする日本がボタンを掛け違えた国とすれば、ポーランドは地道にその歴史・風土に見合うペースでボタンを掛けてきた国という印象です。


日本の約8割に匹敵する国土は殆どが平原(あるいは緩やかな丘陵地)で、その約42%が農地という農業国であること、および非常に高い教育水準(大学進学率はヨーロッパ最高レベル)、この二つの条件を現代ポーランドは活かしています。


共産主義政権下でも国有化・集団化されなかった個人経営中心の農業を逆に生かしつつ、土地に合った麦類の栽培(ライ麦生産量は世界第二位)を主軸に世界一の 生産量を誇る生鮮イチゴ、フランスの消費量の9割以上を供給するエスカルゴ、あるいは各種ハーブ類など欧州向けオーガニック食材等に特化した農業生産の シェアも拡大中のようです。


また、比較的高い農村部を中心とする合計特殊出生率(農村部1.53、都市部1.30/2008)の維持と解 放・自由化後(1990〜)の順調な経済成長、および先進的な金融・財政政策という三つの好条件が「35才以下=50%」という若年層構成の大きさ(平均 寿命=男72歳、女80歳)をもたらしたようです。


そして、このように個性的なポーランドという国の基盤が更に欧州における開発研究部門 の集中(現在、外資系研究開発センターが40カ所設立され、それは旧東欧諸国で最大規模)と国民の起業精神の活発化(国の支援体制が充実)、あるいは西欧 各国における人材の活躍(非常に多くのポーランド人ホワイトカラーの成功など)という好循環をもたらしているようです。


無論、良いことず くめではあり得ませんが、この他にも日本は色々と学ぶべき点があるようです。結局、「歴史」の裏付けを取りそれを現在に十分活かすためには、教育を通して 主権者意識に目覚めた国民自身が、まず自国の歴史を正しく客観的に学ぶ努力に傾注することが先だと教えられたような気がしました。


toxandoria 2010/08/08 10:36


但し、安全・有望な投資先としてのポーランドへの欧米の投資が加速する現況では、 EU先進諸国自身の例に漏れず、グローバリズムの進展と市場原理へ過剰に急傾斜する経済環境トレンドを放置すれば、必ずや大都市集中化と農業の疲弊、農村 部の過疎化、IT・ソフト&金融経済化への傾斜、核家族化、格差拡大傾向などとともに、約30年後にはポーランドと雖も必ずや少子高齢化社会になるという 推計もありますhttp://www.rc11-sociology-of-aging.org/system/files/Poland.pdf


従っ て、かつてソ連支配の共産主義一党独裁体制下で苦難の歴史を経験した東欧・ヴィシェグラード諸国(ポーランドチェコハンガリー、スロヴァキア)の盟主 たるポーランドにおいて、全く新たなタイプの社会・経済・財政政策にかかわる知見が創発されることを期待したいところです。


ぴっちゃん 2010/08/09 11:08


はじめまして。興味深く拝読させていただきました。


「・・・無論、それは、あの映画のような瑞々しい美少年(映画ではスウェーデン人のビョルン・ヨーハン・アンドレセンが演じた)ではなく、もはや老醜をまとった“美少年”であったということらしいが。」とのことですが、ネットで調べてみますと「本物のタージオ」はお歳を召しても、老醜どころか、驚くほど上品な美男子でありましたhttp://www.fotoinfo.pl/sobstr067.htm


toxandoria 2010/08/09 21:27


“ぴっちゃん”さま、コメントありがとうございます。


池内 紀氏がクラクフで邂逅したのが“老齢で何歳のタージオ”であったのか分かりませんが、たしかに60代頃の「本物のタージオ」は上品な美男子ですね。


“非公開”にさせて頂いた情報ありがとうございます。これから良く勉強させて頂きたいと思いますので、今後とも宜しくお願いします。


【エピローグ画像】